取引先に出す見積書を作るとき、品名・数量・単価を並べ、納期や支払条件、有効期限まで漏れなく書こうとすると、思った以上に時間を取られることがあります。前回の見積書を開いて項目の並びや条件の書き方をコピーし、今回の案件に合わせて直していく——そんな作業を毎回繰り返していると、1件あたり数分〜十数分ほどかかってしまうことも珍しくありません。
最近は「ChatGPT(質問を入力すると文章を作ってくれる、無料でも試せるAIサービス)で見積書が作れるらしい」という話も聞くようになりました。この記事では、設備商社・建築業の総務・経理・営業事務の担当者に向けて、見積書本体の項目整理・条件整理・たたき台づくりを中心に、無料のAIで見積書づくりのどこを楽にできるのか、逆にどこは無料AIだけでは難しいのかを、初心者の方でも試せる手順とそのまま使えるプロンプト例つきで整理します。
なお、先にお伝えしておくと、AIに任せるのは正式な金額を決めることではなく、見積書に入れる項目の整理・条件文の整理・たたき台づくりです。金額・品番・数量の確定は、これまで通り担当者が行います。この線引きを意識すると、安心して使えます。
見積書AIとは?無料AIでできること・できないこと
「見積書 AI」には2つの意味がある
「見積書 AI」と検索すると、実は2つの違う話が混ざって出てきます。
- 作る側のAI:自社が取引先に出す見積書の文章や項目を、AIに手伝ってもらって整える使い方
- 読み取る側のAI:仕入先からFAXやPDFで届いた見積書を、AI-OCR(紙や画像の文字を自動で読み取るAIシステム)でデータにする使い方
同じ「見積書 AI」でも、やりたいことはまったく別です。まず自分がどちらを探しているのかをはっきりさせると、遠回りせずに済みます。
この記事で扱うのは「無料AIで見積書の文章・項目づくりを助けてもらう」使い方
この記事では、前者の「作る側」、つまりChatGPTなど無料プランでも試せるAIで、見積書の項目整理や文章づくりを楽にする使い方を中心に説明します(以下、本記事では「無料AI」と呼びます)。
仕入先から届いた見積書を読み取って自社の見積書に転記したい、という「読み取る側」の話を探していた方は、別記事「見積書をOCRでデータ化する方法」で詳しく扱っていますので、そちらをご覧ください。
無料AIでできること・難しいことの早見
先に全体像をまとめておきます。
| 無料AIで助けてもらいやすいこと | 無料AIだけでは難しいこと | |
|---|---|---|
| 項目 | 見積書に入れる項目・条件の洗い出し、抜け漏れチェック、たたき台づくり | — |
| 条件文 | 納期・支払条件・有効期限などの条件文を整える | — |
| 数字 | 計算前の確認項目の整理、チェックリストづくり | 金額・単価・数量の最終確認、正式な見積金額の確定 |
| 文章 | 備考文・送付メール・送付状の下書き、言い回しの手直し | — |
| 帳票処理 | 届いた見積書の文字を読み取る、項目を抽出して表に整える(単発・お試し) | 形式の違う見積書を毎回同じ品質で読み取り・確認し、自社様式へ転記・整形する運用 |
| 管理 | — | 社内の承認フロー・見積履歴の管理 |
ポイントは、AIに任せるのは「正式な金額を決めること」ではなく「見積書に入れる項目や条件、文章を整理し、たたき台を作ること」だという点です。この線引きを意識すると、安心して使えます。
ChatGPTで見積書作成を効率化できる場面
無料AIが見積書づくりで役立つのは、主に見積書本体の「項目の整理」「条件文の整理」「たたき台づくり」の場面です。あいさつ文やメール文面は、その補助として最後に触れます。具体的に見ていきましょう。
見積書に必要な項目案を整理する(抜け漏れチェック)
「この見積書、有効期限を書き忘れていないか」「運賃の扱いを書いていなかった」——。こうした抜け漏れは、案件が立て込むほど起きやすくなります。AIに「設備工事の見積書に一般的に入れる項目を一覧にして」と頼めば、品名・数量・単価・小計・値引き・備考欄・有効期限といった項目の候補をまとめてくれます。自社で使っている項目と見比べる「チェックリスト代わり」として使えます。
納期・支払条件・有効期限などの条件文を整える
「条件は分かっているが、文章にすると硬くなる・長くなる」というときも、AIが役立ちます。納期・支払条件・有効期限などを箇条書きで渡し、「取引先向けに分かりやすく整えて」と頼むと、見積書の備考欄に書きやすい読みやすい文章に整えてくれます。
Excelテンプレートに貼りやすい表形式にする
見積書のExcelテンプレートを見直したいときは、「品名・数量・単価・金額・備考の列を持つ見積書の項目構成を、表の形で出して」と頼むと、Excelに貼り付けやすい表形式のたたき台を作ってくれます。そのまま使うのではなく、自社の運用に合わせて列を足し引きするための案として活用します。なお、表の中の金額・単価・数量は、AIに任せず必ず自社で入力・確認します。
見積書全体のたたき台を作る
項目・条件がそろってきたら、「ここまでの項目と条件で、見積書全体のたたき台を作って」と頼むと、見積書の骨組みを一度にまとめてくれます。金額・品番・数量の欄は空けてもらい、人があとから入力・確認する前提で使います。完成品ではなく、あくまで体裁を整える出発点として活用します。
備考欄や送付メールの文面を整える(補助的に)
ここからは補助的な使い方です。見積書を送るときのメール文や送付状、丁寧なあいさつ文も、AIに下書きを作ってもらえます。「見積書を添付してお送りする旨の、丁寧なビジネスメールを作って」と頼めば、件名から本文まで下書きが用意できます。すでにある備考文を「もう少し丁寧に」「もっと簡潔に」と直してもらうのも得意です。これらは見積書本体ができたあとの仕上げとして使うと効果的です。
無料AIで見積書の項目・文面を整える手順
ここからは、実際に無料AIを使う手順を、初めての方向けに説明します。
ステップ1:AIに「何を・誰宛てに・どんな条件で」を箇条書きで伝える
最初に、つくりたい見積書の前提を箇条書きでAIに伝えます。たとえば「建築資材の見積書」「宛先は取引先の購買担当者」「納期は2週間、支払いは月末締め翌月末払い」のように、分かっている条件を並べるだけで構いません。
ステップ2:見積書に入れる項目・条件の抜け漏れを洗い出してもらう
次に「この内容で、見積書に入れておくべき項目の抜け漏れがあれば教えて」と頼みます。有効期限や運賃の扱いなど、抜けがちな項目に気づけることがあります。
ステップ3:出てきた項目案・文案を読み、自社の言い回しに合うよう指示して直してもらう
AIが出した案は、そのまま使うのではなく必ず読み返します。自社で使わない項目は外し、言い回しが合わなければ「もっと自社らしい表現に」「この一文は削って」と追加で指示すると、自社に合った形に近づきます。
ステップ4:Excelやテンプレートに貼り付けて整える
文章や項目が固まったら、いつも使っているExcelやテンプレートに貼り付けて、レイアウトを整えます。AIはあくまで下書きづくりまでで、最終的な体裁は手元で仕上げます。
ステップ5:金額・品番・納期・税率は必ず人が確認する
ここが最も大切な手順です。金額・品番・数量・納期・税率といった数字や固有名詞は、AIの出力をそのまま信用せず、必ず人が確認します。 AIは文章を作るのは得意ですが、数字の正しさを保証するものではありません。金額や品番の確定は、これまで通り担当者が責任を持って行ってください。
そのまま使える見積書AIプロンプト例
実際に使えるプロンプト(AIへの指示文)の例を紹介します。コピーして、自社の条件に書き換えて使ってください。いずれも金額・品番・数量は、AIに決めさせず人が入力・確認する前提です。なお、プロンプトには実在の取引先名や具体的な単価などの社外秘の情報は入れないようにしてください(理由は後の章で説明します)。
見積書に入れる項目案を整理するプロンプト例
建築資材を販売する商社が取引先に出す見積書に、一般的に入れる項目を一覧にしてください。
品名・数量・単価・小計・値引き・備考欄・有効期限・支払条件なども含めて、
抜け漏れがないか確認できる形でお願いします。
金額や品番は私が後で記入するので、項目名だけで構いません。
Excelに貼りやすい表形式にするプロンプト例
見積書の項目を、Excelに貼り付けやすい表の形で出してください。
列は「品名・数量・単位・単価・金額・備考」とし、行は空欄のままで構いません。
金額・単価・数量は私が後で入力するので、見出しと枠だけ作ってください。
見積書全体のたたき台を作るプロンプト例
次の条件で、見積書全体のたたき台を作ってください。
・対象:建築資材の見積書
・宛先:取引先の購買担当者
・含める項目:品名・数量・単価・金額・小計・値引き・備考・有効期限・支払条件
金額・品番・数量の欄は空欄にしておき、私が後で入力・確認します。
体裁を整える出発点として使いたいので、完成版ではなく骨組みで構いません。
納期・支払条件・有効期限の条件文を整えるプロンプト例
以下の条件を、見積書の備考欄に書く丁寧な文章に整えてください。
・納期:ご注文から2週間
・支払条件:月末締め翌月末払い
・有効期限:発行日から1か月
送付メール・あいさつ文を作るプロンプト例(補助)
見積書を添付してお送りする旨の、取引先向けの丁寧なビジネスメールを作ってください。
件名と本文を分けて、ご確認のお願いと、ご不明点があればご連絡いただきたい旨を含めてください。
AIで作った見積書を使う前に確認すべき項目
AIに作ってもらった下書きは、取引先に出す前に必ず人の目で確認します。特に次の点をチェックしてください。
金額・数量・品番・税率・端数処理――数字と固有名詞は人が必ず照合する
AIは文章は作れても、正しい数字を保証しません。金額・数量・品番・税率・端数処理は、見積もとのデータと突き合わせて、人が一つずつ確認します。
納期・支払条件・有効期限が自社の実際の条件と合っているか
AIが整えた備考文が、実際の取引条件と合っているかを確認します。サンプルの条件がそのまま残っていないか、特に注意してください。
取引先名・敬称・社名表記の誤りがないか
社名の表記ゆれ(株式会社の位置、正式名称と略称など)や敬称の誤りは、取引先に失礼になります。AIが整えた文面でも、宛名まわりは必ず確認します。
取引先情報・単価情報をそのまま外部AIに入力していないか
仕入先や取引先の名前、単価などの情報は、自社にとって大切な情報です。これらを安易に外部のAIサービスに入力してよいかは、社内の規程や取引先との取り決めによります。機密にあたる情報は入力しない、または社内で扱い方を確認してから使うようにしてください。
無料AIを見積業務で使うときの限界と注意点
無料AIは文章づくりや項目整理に役立ち、工夫すれば帳票の読み取りまで試せます。ただし、見積業務として「毎回・同じ品質で」回そうとすると、注意したい点が出てきます。次のような場面では、無料AIだけで運用しようとすると課題が残りやすくなります。
仕入先見積を毎回同じ品質で読み取り・転記する運用
仕入先からFAXやPDFで届いた見積書は、無料AIでもPDFや画像から文字を読み取れる場合があります。一度試すだけなら、品番や単価を抜き出してくれることもあります。
ただし、仕入先ごとに形式が違う見積書を、毎回同じ品質で読み取り、品番・単価・数量を確認し、自社様式へ転記・整形するとなると、話は変わります。形式ごとにプロンプト(AIへの指示文)を工夫し、読み取り結果を一つずつ確認し、誰がやっても同じ結果になるよう運用ルールを決める——こうした手間が必要になります。FAXはいったん複合機でスキャンしてPDFにする必要があり、紙の状態や解像度によって読み取りの精度も変わるため、結果がそろわず確認に時間がかかることもあります。この読み取りの詳しい話は、別記事「見積書をOCRでデータ化する方法」で扱っています。
品番・単価・数量の転記と、自社フォーマットへの反映を業務として安定させる
読み取った内容を自社の見積書フォーマットに転記・反映する作業も、単発であればAIで試せます。ただし、仕入先ごとに品番の付け方や書式が違うため、毎回の業務として安定させようとすると、確認や整え直しの手作業が残りやすく、担当者ごとのやり方に依存(属人化)しやすい部分です。
社内承認フローや見積履歴の管理
「誰が確認して、誰が承認したか」「過去にどの見積書を出したか」といった社内の承認・履歴の管理は、文章づくりとは別の仕組みが必要です。無料AIはこの管理までは担えません。
取引先情報・単価情報を安易に外部AIへ入れることのリスク
前章でも触れたとおり、取引先名や単価などの情報を外部AIに入力することには、情報管理上のリスクがあります。業務で本格的に使う場合は、社内規程や取引先との秘密保持の取り決めとの整合を確認しておくことが大切です。
見積書作成をさらに効率化する方法
無料AIでできることと、難しいことが見えてきました。最後に、次の一歩を整理します。
考え方はシンプルで、項目整理・条件文づくりは無料AIに、数字の確定・転記・履歴管理は専用の仕組みに、と役割を分けることです。それぞれの得意分野を組み合わせると、無理なく効率化できます。
まずは、明日からこんなことを試してみてください。
- 直近で出した見積書を1枚開き、取引先名・単価などの機密情報を伏せたうえで、「この見積書に入れる項目の抜け漏れがないか確認して」と無料AIに頼んでみる——項目のチェックから始めるのが、いちばん安全な第一歩です
- よく使う条件文(納期・支払条件・有効期限)を1つ選び、この記事のプロンプト例を自社の条件に書き換えて試す——次回から使い回せる文案ができます
- AIに見積書の文章を作らせるときは、実在の取引先名・単価を入力しない、と自分の中でルールを決めておく——機密情報を外に出さないための最初の習慣になります
そのうえで、
- 仕入先から受け取った見積書の読み取り・OCRを詳しく知りたい方は、別記事「見積書をOCRでデータ化する方法」をご覧ください
- 見積もりの作成から修正まで業務全体の自動化を検討したい方は、別記事「見積もりの作成・修正を自動化する方法」をご覧ください
BizFollowでできること
ここまで見てきたように、無料AIでも、見積書の項目整理や文面づくりはもちろん、PDFや画像から見積書の文字を読み取ることまで、ある程度は試せます。一方で、毎回プロンプトを入力し、読み取り結果を一つずつ確認し、自社様式に整える作業を担当者が都度行う形だと、手作業や担当者ごとのやり方への依存(属人化)が残ることがあります。
BizFollowは、この「仕入先見積の読み取り・確認・自社様式への転記」を、見積業務として毎回・安定して、非エンジニアの担当者でも扱いやすくするための専用ツールです。AIでできることを、その場かぎりのお試しではなく日々の業務として回せるようにする、という位置づけになります。仕入先から届く見積書の読み取り・データ化と、仕入先様式から自社様式への転記・整形を支援するAI-OCR(紙や画像の文字を自動で読み取るAIシステム)のサービスで、読み取ったあとは人が内容を確認する運用を前提とした設計です。機械販売・工具部品商社・建築資材販売など、仕入先ごとにフォーマットが異なる都度見積を多く扱う商社・販売会社を主な対象としています。
まずは自社の帳票を1枚試しに読み込んでみる、という小さな一歩から始められます。用途によって申し込み先が分かれているため、目的に合わせて選んでください。
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機能・料金・対応している帳票の詳細は、お問い合わせページからご確認いただけます。掲載内容は2026年6月時点の情報です。
