塑性加工とは?メリット・デメリットと種類を解説
塑性加工は、金属加工の方法の中でも幅広く取り入れられている加工のひとつです。
この記事では、そんな塑性加工について基本的な情報をまとめました。
目次
塑性加工とは?
塑性加工とは、材料に圧力をかけて目的の形状に変形させる加工方法です。
金属は、圧力をかけると元の形状に戻ろうとする弾性という性質を持っています。
しかし、一定の圧力をかけることで元に戻らない塑性という性質も持ち合わせており、これを利用しているのが塑性加工です。
塑性加工は材料の強度や耐久性を向上させることができ、なおかつ複雑な形状を実現することができるため、自動車部品を主に、工業製品の製造に幅広く活用されています。
塑性加工のメリット・デメリット
塑性加工は材料に対してメリットがあるだけでなく、製造過程においてもメリットがあります。
しかし、その反面デメリットもあります。
ここでは塑性加工の特徴を、メリットとデメリットにわけてまとめました。
塑性加工のメリット
材料の性質を改善できる | 変形させることで金属が持つ硬化という性質により強度を向上させることができる 材料の残留応力などの内部欠陥を減らせる |
生産性が高い | 型を用いるため加工時間は短く大量生産に向いている |
材料歩留まりが良い | 切削加工のように切り屑が大量に出ることはないためコストを小さくできる |
塑性加工のデメリット
それほど精度が高くない | 性質上大まかな加工に向いていて切削加工などと比べて精度が高いわけではない 高い精度を求める場合は追加で切削加工などを行う場合も多い |
初期コストが大きい | 加工機や型が必要な場合が多いうえ継続的なメンテナンスも必要 |
加工温度による塑性加工の種類
塑性加工には加工温度と加工方法により、いくつかの種類に分類されます。
ここでは、加工温度による塑性加工の種類についてまとめました。
加工温度による塑性加工の種類は、主に以下の2つです。
- 熱間塑性加工
- 冷間塑性加工
熱間(ねっかん)塑性加工
熱間塑性加工は、金属を高温で変形させる加工方法です。
高温下では金属の結晶構造が柔軟になり、変形が容易になります。
熱間塑性加工は、高い形状制御能力と均一な組織構造形成という利点があります。
しかし材料が膨張して変形するため、基本的には冷間塑性加工で行われます。
熱間塑性加工で行われるのは、材料の硬度が高い場合などです。
冷間(れいかん)塑性加工
冷間塑性加工は、金属を加熱せずに変形させる加工方法です。
金属は低温状態でも一定の塑性を持っていて、これを利用して行われます。
熱間塑性加工と比べると、冷間塑性加工は材料の強度を保ちつつ変形させることができるため、精密な形状や寸法、また優れた表面状態を実現することができます。
しかし、その分材料に大きな圧力をかけることになるため硬化し、劣化や割れなどを起こすおそれがあります。
加工方法による塑性加工の種類
ここでは、加工方法による種類についてまとめました。
加工方法による塑性加工の種類は、主に以下の6つです。
- プレス
- 転造
- 鍛造
- 圧延
- 押し出し
- 引き抜き
プレス
プレス機と金型を用いて、板材を目的の形状に変形させる加工方法です。
せん断や曲げ、絞りといった加工方法が該当します。
似た板金加工についても、塑性加工のひとつです。
▼プレス加工についての記事
プレス加工とは?メリットやデメリット・加工方法・板金などとの違いを紹介!
▼板金加工についての記事
板金加工とは?特徴や種類・加工工程やプレス加工との違いなどを解説
転造
金属に圧力をかけて目的の形状にする加工方法です。
転造ダイスと呼ばれる、目的の形状にするための凹凸の工具を材料に押し付ける加工方法のため、転写するイメージとなります。
鍛造
金型や工具を用いて材料に圧力をかけて、目的の形状にする加工方法です。
鍛造プレスやハンマーなどで材料を圧縮したり叩いたりすることで変形させると同時に、材料の組織を整えて強度を向上させます。
圧延
圧延機を用いて、板材をローラーなどで圧力をかけることで薄く延ばす加工方法です。
製品というよりかは、板や棒などの材料を製造する際に用いられます。
押し出し
押出機を用いて、材料を一定の断面形状で押し出す加工方法です。
よくところてんに例えられます。
フレームや棒などの材料を製造する際に用いられます。
引き抜き
ダイスを用いて、この外側に材料を引っ張ることで、一定の断面形状にする加工方法です。
パイプや角材、ワイヤーなどの製造に用いられます。
まとめ
塑性加工は、金属の一定の圧力をかけることで元に戻らないという性質を利用した、金属加工のひとつです。
強度や耐久性を向上させつつ、また生産性にも優れているというのは、他の加工方法にはあまり見られない特徴といえます。
塑性加工についての理解を深め、金属加工時に正しい加工方法を選択できるようになりましょう。