板金加工の曲げ(ベンダー)加工|形状種類・注意点や対策などの基礎を解説

  • 投稿日:2023年6月15日(木曜日)
板金加工の曲げ(ベンダー)加工|形状種類・注意点や対策などの基礎を解説

曲げ加工は、圧力を加えて金属を曲げる加工方法です。

板金加工やプレス加工のなかでも基本的な加工方法なので、小さな部品から自動車のドアやボンネットなどの大きな部品まで、さまざまな製品の製作に利用されています。
なお、一見単純な加工方法に見えますが、バリエーションが豊富なうえ、金属素材や板材の特性を熟知して適切な対応をする必要があるので、高い技術が要求されます。

この記事ではそんな曲げ加工について、仕組みや種類、使われる金属素材や注意点などをご紹介します。

曲げ加工とは

曲げ加工とは、圧力を加えることで金属の板材や管を曲げる、板金加工やプレス加工の代表的な加工方法のことです。

金属素材としては鉄材、ステンレス材、アルミニウム材などが使用されます。
加工方法のバリエーションも豊富で、大きく分けて型曲げ、押さえ巻き曲げ、成形加工、送り曲げの4種類に分類されます。

なお、スプリングバックや曲げ割れなどを起こす恐れがあり、加工する際はこれらについて考慮することがポイントとなります。

ちなみに、板金加工またプレス加工については、以下の記事で網羅的にご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。

▼板金加工についてご紹介している記事
板金加工とは?特徴や種類・加工工程やプレス加工との違いなどを解説

▼プレス加工についてご紹介している記事
プレス加工とは?メリットやデメリット・加工方法・板金などとの違いを紹介!

曲げ加工の仕組み

曲げ加工は、金型が取り付けられたプレス加工機や、回転ロールが取り付けられたロールベンダーなどで行います。

プレス加工機を使用する場合、金型が上部に雄型のパンチ、下部に雌型のダイとあり、ダイの上に置いた板材をパンチで押し込んで曲げ加工を行う、という仕組みになります。

一方ロールベンダーを使用する場合は、2つの回転ロールと1つの回転ロールの間に板材を送り込みながら曲げ加工を行う仕組みになります。

曲げ加工で使われる金属素材について

曲げ加工で使われる板材の金属素材は、鉄鋼材料(鉄やステンレスなど)と非鉄金属材料(アルミニウムなど)に分けられます。
曲げ加工で使われる代表的な3種類の金属素材についてご紹介します。

鉄材

鉄材は、適度な硬度と弾性を持ち合わせているので曲げやすく、安価でよく使われる金属素材です。
ステンレスやアルミニウムより錆びやすく装飾性に劣りますが、加工後にメッキを施すことで欠点を補うことはできます。

鉄材に曲げ加工を行うときの注意点
・通常は安価で汎用性が高いSS材(一般構造用圧延鋼材)を使用し、より強度や硬度が必要な場合にSC材(炭素鋼鋼材)を使用する

ステンレス材

ステンレス材は鉄材に比べて曲げ加工がしづらいですが、硬くて錆びにくく、装飾性にも優れる金属素材です。

ステンレス材に曲げ加工を行うときの注意点
・ステンレス材の種類によって硬度や弾性が異なるので、種類に合った曲げ加工の方法を選択する必要がある
・熱伝導度が低いので、曲げ加工の際の熱が原因で割れることがある
・スプリングバックが大きいので、しっかりとした対策が必要

アルミニウム材

アルミニウム材は、軽いうえ、表面に酸化皮膜を作るので錆びにくく、比較的柔らかいので、曲げ加工を行いやすい金属素材です。

アルミニウム材に曲げ加工を行うときの注意点
・アルミニウム材は鉄材やステンレス材などに比べて、粘り強さの指標である靭性が低く、壊れやすいのでクラック対策が必要
・弾性が高いので、しっかりとしたスプリングバック対策も必要

曲げ加工の種類

曲げ加工には、大きく分けて下記のように4種類あります。

  • ①型曲げ
  • ②押さえ巻き曲げ
  • ③成形加工
  • ④送り曲げ

①型曲げ

型曲げは、雄型のパンチと雌型のダイの上下一対の金型を使用して板材を曲げる加工方法です。
下側のダイに板材を置き、上からパンチで押して圧力を加えて曲げる、代表的な曲げ加工の方法です。

 

V曲げ

V曲げは、V型などの凹みのついたダイの上に置いた板材を、V型で凸の形をしたパンチで押して曲げる加工方法です。
圧力の加え方によって3種類の方法があります。

パーシャルベンディング(自由曲げ)
パーシャルベンディングは、V型で凸型のパンチで、板材をダイの凹みに押し込む点は他の2つと同じです。
しかし、完全に押し込まずに途中で止めることで、さまざまな角度の曲げ加工に対応できる汎用性の高い方法となります。

板材はパンチの先端部とダイの凹みのヘリ部分のみで接触している自由曲げで、金型の形状を正確に反映しているわけではないので、寸法は板材の状態や加工機の精度に依存します。
そのため、寸法精度を安定させるには高度な技術が必要です。

同じ金型で、鋭角から鈍角の曲げ加工まで幅広く対応できるので、多品種少量生産や試作品の製作などにも向いています。

ボトミングベンド(底突き曲げ)
ボトミングベンドは、V曲げ加工のなかでも最も一般的な方法です。

V型で凸型のパンチで、板材がダイのV型の凹みに押しつけられ、V型の凹みの側面に接触して沿うようにして曲げの形がつけられます。
そのため、比較的小さな加圧でも、金型の形を正確に反映した寸法精度の高い曲げ加工が行えます。

しかし、スプリングバックを考慮した金型が必要です。

コイニングベンド(圧印曲げ)
コイニングベンドは、高い圧力を加えて、V型で凸型のパンチを板材に押しつけ、ダイのV型の凹みに沿って密着するように形がつけられます。

高い圧力をかけて、板材がパンチとダイの一対の金型に密着するように挟まれて形がつくので、金型の形がより正確に反映され、他のV曲げより高精度で曲げ加工が行えます。

また、加工後のスプリングバックの影響はとても小さいです。

 

L曲げ(押さえ曲げ)

L曲げは、板材の一端をダイの上に置き、上からパッドなどで、動いたり滑ったりしないように押さえつけ、板材のもう一端がパッドからはみ出している部分を、上から下へパンチをスライドすることで、下方に折り曲げる加工方法です。

L曲げは直角より鋭角に曲げ込むことができないので、スプリングバックにより、どうしても直角より鈍角に仕上がります。
そのため、直角のL曲げには向きません。

なお、V曲げとは異なり、板材の片側を固定しておけるので、大型の板材などを補助なしで曲げることができて、板材の自重による腰折れが発生しない利点があります。

 

U曲げ(逆押さえ曲げ)

U曲げは、パンチとパッドで板材を挟み込み、両端からはみ出た部分の板材をU字に曲げる加工方法です。
専用の金型が必要ですが、曲げの角度が均一で、一度にU字の両サイドを曲げることができるので、工数を少なく済ませられます。

 

Z曲げ(曲げ戻し)

Z曲げは、読んで字のごとく、板材をZ字状に曲げる加工方法です。
Z状にかみ合うパンチとダイの間に板材を挟んで圧力をかけて1工程でZ曲げを行う方法や、L曲げを2工程行う方法など、いろいろなZ曲げの加工方法があります。

 

R曲げ

R曲げは、先端部が丸みを帯びたパンチを使い、板材をR状に曲げる加工方法です。
V曲げなどに使用される汎用の金型を転用できる利点があります。

 

O曲げ(円筒曲げ)

O曲げは、板材をパイプ状に丸める加工方法です。
U字状で凸型のパンチと、U字の凹みのダイに板材を挟んで圧力をかけて、下半分のRを形成します。
次の工程で、上半分のRの形状がくり抜かれた金型を、上部に開放しているU字の縁の上から押さえつけて円筒状に曲げる加工方法です。

 

ヘミング曲げ

ヘミング曲げは板材の端を、真逆に折り返す加工方法です。
板材の端を折り返して厚みをもたせることで安全で丈夫になり、折り返し部の曲線のおかげで外観もよくなります。

②押さえ巻き曲げ

押さえ巻き曲げ加工は、板材の一端を押さえて固定した状態で、固定部からはみ出した部分を折りたたむように曲げる加工方法です。
折りたたむように丁寧に曲げるので、型曲げに比べて加工中にキズが付きにくいです。

③成形加工

成形加工は、板材を曲線状に曲げる加工方法です。
仕上がりの形状により3種類に分類されます。

 

フランジ成形

フランジ成形は、板材の端にフランジ(つば状の出っ張り)を作るための曲げ加工方法です。
フランジ成形は曲げ部分の湾曲方向によって4種類に分類されます。

曲げフランジ成形
つば状の出っ張り部分が直線的になる曲げ加工の方法で、型曲げと同じ工程で作られます。
伸びフランジ成形
つば状の出っ張り部分が外側に凸になるように湾曲する曲げ加工方法です。
縮みフランジ成形
つば状の出っ張り部分が内側に凹むように湾曲する曲げ加工方法です。
複合フランジ成形
上記の3種類のフランジ成形を組み合わせた曲げ加工方法です。

 

バーリング加工

バーリング加工は、板材に縁がついた穴をつけるための曲げ加工方法です。
板材に開けられた下穴にパンチを押し込み、穴の周りに縁をつけます。

 

カーリング加工

カーリング加工は、板材の端部を円筒状に丸める曲げ加工方法です。
板材の端部を強化したり、鋭い端部を丸めることで安全性を高めたりする目的で利用されます。

④送り曲げ

送り曲げは、板材を回転するロールに押し当て、送り込みながら曲げる加工方法です。

 

ロール曲げ

ロール曲げは、板材をなめらかにカールする曲面状に曲げる、送り曲げ加工です。
2本の回転ロールと1本の回転ロールの間に板材を挟んで送り込みながら、板材にRをつけたり、円筒状に曲げたりします。

 

ロール成形(ロールフォーミング)

ロール成形は、シート状の金属板(コイル材)を連続供給しながら、流れ作業的に複数の送り曲げ加工が行える加工方法です。
ロールの形状により、さまざまな断面形状の曲げ加工に対応できます。
コイル材が連続供給され、流れ作業的に複数の工程を直列に連結できるので、複雑な曲げ加工にも対応でき、大量生産にも向いています。

曲げ加工で起こるスプリングバックの原因と対策

曲げ加工を行うと、板材の曲げた部分に、元の形状に戻ろうとする力(スプリングバック)が働きます。
スプリングバックの影響で、加工後に曲げの角度より広がってしまうので、曲げ加工の精度が落ちます。

スプリングバックが起こりやすい条件は下記の通りです。

  • 板材の金属素材の引張強度が高い
  • 板材が薄い
  • 曲げの角度が小さい

高い精度で曲げ加工を行うために、下記のようなスプリングバック対策があります。

  • 曲げ加工を1度で行わず、複数の工程に分けて行う
  • 予想されるスプリングバックの影響の分だけ曲げの角度を小さくする

曲げ割れの原因と対策

曲げ加工を行うと、曲げた金属の内側は圧縮されるのに対して、外側は引っ張られるので延びます。
曲げの角度を小さくするほど曲げた部分の外側に、より強い引き延ばす力が働き、限界を超えると曲げ割れが発生します。

板材の金属の種類によって最小曲げ半径は異なり、伸びやすい金属ほど小さな角度で曲げても割れが発生しにくくなるので、最小曲げ半径は小さくなります。
板材の金属の種類以外にも下記のように最小曲げ半径を小さくする方法があります。

  • 板材の圧延方向に対して垂直に曲げる
  • せん断加工の際にできたバリが、内側になるように曲げ加工を行う

まとめ

この記事では、板金加工やプレス加工のなかでも基本的な加工方法、曲げ加工について基本的なことをご紹介しました。
曲げ加工を依頼する際、また曲げ加工を行う際に、ご参考いただければ幸いです。

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