せん断加工とは?5種類の特徴と加工時の注意点|4種類のプレス機についても解説
せん断加工は、素材の切断を行う方法の一つです。
せん断加工には多様な方法があり、それぞれ特徴があります。
特徴を理解すると、どのプレス機の使用が最適かを理解でき、良質な製品の製造ができたり、コスト削減につながったりします。
この記事では、せん断加工の方法と特徴を紹介しています。
さらに、せん断加工で使用する機械についても解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
目次
せん断加工とは
せん断とは、金属をずらしたり入違ったりするときに働く力を利用して切断をおこなう方法です。
板材や線材、棒材の切断で利用される加工で、ダイとパンチが付いたプレス機を使用します。
金属はずらす力が働くと、力の方向に合わせて変形し、限界を超えたとき切断されます。
たとえば、せん断を利用した身近な道具がはさみや穴あけパンチで、上下に入れ違う力を利用し、紙を切断しています。
ちなみにせん断加工は、板金加工やプレス加工の一つです。
それぞれについては、以下の記事で全般的に紹介しているので、ぜひあわせて参考にしてみてください。
▼板金加工についての記事
板金加工とは?特徴や種類・加工工程やプレス加工との違いなどを解説
▼プレス加工についての記事
プレス加工とは?メリットやデメリット・加工方法・板金などとの違いを紹介!
せん断加工5種類の特徴を紹介
せん断加工にはさまざまな種類があり、代表的な加工方法は以下の5種類です。
- 精密せん断加工
- ブランク加工
- 穴あけ加工(ピアス加工)
- コンパウンド加工(総抜き加工)
- トリミング加工(縁切り加工)
目的により加工方法を使い分けるため、特徴の理解が必要です。
以下では、それぞれの加工方法や特徴を紹介します。
精密せん断加工
精密せん断加工は、切り口を美しく仕上げる精度の高い加工で、「ワレ」や「ダレ」を防ぎます。
ほとんどの加工が専用のプレス機を使用し、切削加工や研削加工などの工程が不要です。
特徴は金型のクリアランスが小さいため、金型の接触で起こる欠け(チッピング)に注意が必要です。
精密せん断は主に3つの種類があり、以下で特徴を紹介します。
種類 | 特徴 |
シェービング | せん断された切断面を、材料板厚の3~10%程度薄くそぎ落とす加工。 ダレ抑制やダレ無しが可能。 |
仕上げ抜き | 打ち抜き加工や穴あけ加工と同じ工程。 金型のクリアランスを小さくし打ち抜いて加工する方法で、ワレが起きにくい。 汎用プレス機を使用し、簡易的に精密せん断がおこなえる。 |
ファインブランキング(FB) | 専用プレス機にV字形状の板押さえと逆板押さえが入っており、打ち抜く際に材料を支えている。 せん断面の仕上がりがよく、ダレが抑制される。 |
ブランク加工
プレス加工は、材料を金属板にする前準備があり、ブランク加工といわれます。
また、ブランクは切断した素材を指します。
ブランク加工は主に5種類あり、以下で特徴を紹介します。
種類 | 特徴 |
切断加工(シャーリング加工) | 上下の刃で金属板をはさみ、切断する。 一度の動作で多くの製品製造が可能で、素早く切断できる。 |
分割加工 | 分割する加工で、左右非対称の切断した素材を同時に生成できる。 製品の切り離しにも使用される加工法。 |
抜き打ち加工(パンチング加工) | 金属板から金型で決められた型を打ち抜く加工。 金属板を上下で押さえて切断するため、ソリが発生しにくい。 |
切り欠き加工(ノッチング加工) | 金属板の端の一か所を切り欠く加工で、切断した素材の補強に利用する。 金属の端を使用するため、工数削減になる。 |
切込み加工(スリット加工) | 金属板に切込みを入れる加工で、曲げ加工と合わせて利用される場合が多い。 |
穴あけ加工(ピアス加工)
穴あけ加工は、金属板に連続的に穴をあけて打ち抜くせん断加工です。
目的に合わせ、プレス機で丸形や角形の金型を使用し、さまざまな形に金属板を打ち抜きます。
打ち抜いて残った金属板が製品です。
穴あけ加工は主に2種類あり、以下で特徴を紹介します。
種類 | 特徴 |
追い抜き加工 | 金属板を細かくずらし連続的に穴をあけ、穴を重ねながらさまざまな形を打ち抜く方法。 |
二ブリング加工 | 金属板を細かくずらし連続的に穴をあける加工で、追い抜き加工より細かくピッチで穴を重ねて打ち抜く方法。 |
コンパウンド加工(総抜き加工)
コンパウンド加工は、穴あけと抜き打ちを同時に行い、製品を加工する方法です。
複数の工程や製品生成を一度に行えるため、生産効率が上がります。
また、加工位置のズレが無くなるため、製品の一貫性が向上し高い精度の製品が量産可能です。
ただし、金型の構造は複雑なため、細やかな調整や適切な品質管理が必要です。
コスト削減は品質が保つからこそ実現するものであり、金型を長く使用し続けるためにも品質管理には十分に注意しましょう。
トリミング加工(縁切り加工)
トリミング加工とは、板材や生成された部品の端を美しく仕上げるために行う加工です。
製品の不要な部分である余肉を切り落とし、製品を仕上げます。
細かい部分や製品が少ないものは旋盤を利用する場合がありますが、プレス機を利用すると、一定の品質の製品が短時間で量産できるため、コスト削減にもつながります。
せん断加工で使用される機械4種類の特徴を紹介
せん断加工では、工程をすすめていくと「切る」「抜く」「曲げる」の成形の際、さまざまな機械を使用します。
以下では、主に機械4つの特徴について紹介します。
- シャーリングマシン
- プレス機
- タレットパンチプレス
- ファインブランキングプレス
シャーリングマシン
シャーリングマシンは、金属板の切断を目的としています。
上下に歯がついており、圧力を加えて切断をする仕組みです。
シャーリングマシンを使って、安全に良質な製品を製造する際は、切断できる最大板圧の確認が必要です。
薄すぎる金属板は歯の間に挟まり、変形するため切断ができません。
また、厚すぎる金属板は歯に負担がかかり、故障の原因になります。
使用前には、シャーリングマシンが対応する板厚を確認してから作業に取り掛かりましょう。
プレス機
プレス機は、金属板をプレスし圧力をかけて、加工をおこないます。
プレス機は金型と合わせて使用し、金型の形によって加工が異なります。
プレス機で主な加工法は以下の4つです。
- 曲げ加工
- 穴あけ加工
- くりぬき加工
- 絞り加工
プレス機は決まった金型でプレスをするシンプル設計なため、一定の品質を保った製品を量産できます。
機械操作一つで加工が可能なため、さまざまな金型を用意すると、コストダウンが見込めるメリットがあるでしょう。
タレットパンチプレス
タレットパンチプレスは、打ち抜き加工や穴あけ加工に使用され、プレス機と似た用途をもっています。
金属板に、丸形や角形のパンチを組み合わせて加工をおこない、汎用金型を使用するため専用金型が不要です。
組み合わせを工夫すると、少量の製品や形がさまざまな製品、大量のロット製品など、応用が可能です。
そのため、低コストで製品の製造や加工ができます。
タレットパンチプレスには、タレット式とシングル式があるため、用途に合わせて使い分けるとよいでしょう。
ファインブランキングプレス
ファインブランキングプレスは、精密せん断加工の際に使用される機械の一つです。
歯で穴あけをする部分と、周りを押さえる部分の両方に圧力をかけるため、せん断面にゆがみが少なく、良質な仕上がりが可能です。
また、後処理が不要なため、人件費や時間のコスト削減の面でも、重要な役割を担っています。
超合金やステンレス鋼などの硬い素材にも対応するため、精密機器や医療機器などの幅広い分野で利用された実績があります。
せん断加工の仕組みとバリ・ダレの原因を解説
材料に金型を押し当ててせん断する際、材料の表面に丸みを帯びたR状の切断面ができます。
R状の丸くなった部分を「ダレ」と呼び、せん断した際のダレの反対側には、材料が変形をして突起になって残る「バリ」が発生します。
ダレやバリはいずれもせん断加工をする際には発生してしまうケースが多く、とくにバリの発生が著しく大きいと、二次加工が必要です。
なるべく発生を抑えるには、精密せん断加工が最も有効的なため、せん断加工の機械を導入する際は、検討するとよいでしょう。
せん断加工をする際の注意点
せん断加工で注意するポイントは、金型同士のクリアランスの設定です。
せん断する金属板の厚みによって適切に調整すると、金属板の変形が少なく、二次加工の手間が省けます。
クリアランスが広すぎるとバリの発生が大きくなる傾向があり、クリアランスが狭すぎると金型の故障リスクが高まります。
せん断加工で機械を使う際は、クリアランスの設定に注目してみましょう。
まとめ
せん断加工には用途によってさまざまな加工の種類があり、加工に合わせて使用する機械が複数あります。
プレス機の使い方によっては、ほかの用途を補えるものもありますが、用途に適したプレス機を使用すると、良質な製品の量産が可能です。
良質な製品の製造とコスト削減の両方を補うには、加工の用途に合った機械の選択が必要不可欠です。
せん断加工の目的を明確にし、必要な機械は何かを考えてみるとよいでしょう。