ステンレス鋼のSUS403とは|特徴・用途・化学成分・機械的性質を解説
この記事では、マルテンサイト系ステンレス鋼の一種であるSUS403について、その化学成分や機械的性質、また特徴や用途などについてまとめました。
目次
SUS403とは
SUS403は、ステンレス鋼の一種で、JIS規格に準拠したマルテンサイト系ステンレス鋼です。
ステンレス鋼には、鉄を主成分としつつも、クロムを含むことで耐食性が向上した材料が多くありますが、SUS403はその中でも特に高温環境や高強度を必要とする用途に適しています。
例えばSUS304のようなオーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性が優れているものの、機械的強度や硬度がやや劣る傾向があります。
それに対して、マルテンサイト系ステンレス鋼のSUS403は、熱処理によって強度や硬度を向上させることができる点が特徴です。
このため、耐久性が必要な部品や工具の材料として広く使われています。
また、SUS403は、クロムの含有率が比較的高いため、一定の耐食性を有していますが、他のステンレス鋼に比べると耐食性がやや劣るというデメリットもあります。
特に、塩分の多い環境や酸性の環境下では、腐食しやすいため、使用場所には注意が必要です。
したがって、SUS403は、耐食性よりも機械的強度が重視される用途で使用されることが多くなっています。
SUS403の化学成分
SUS403の化学成分は以下のようになっています。
SUS403の化学成分 | |||||
炭素(C) | ケイ素(Si) | マンガン(Mn) | リン(P) | 硫黄(S) | クロム(Cr) |
0.15%以下 | 0.50%以下 | 1.00%以下 | 0.040%以下 | 0.030%以下 | 11.50%~13.00% |
※JIS G 4303参照
SUS403におけるクロム含有量は、11.50%から13.00%の範囲です。
このクロムは、SUS403が耐食性を持つ大きな要因となっていますが、耐食性においては他のステンレス鋼、特にSUS304やSUS316など、クロムやニッケルの含有量が高いオーステナイト系ステンレス鋼には及びません。
しかし、炭素含有量が多いため、適切な熱処理を施すことで高い硬度と強度を得ることができます。
SUS403の機械的性質
SUS403の機械的性質は以下のようになっています。
焼きなまし状態 |
硬さHB |
200以下 |
焼き入れ焼き戻し状態 | ||||
引張強さN/mm² | 耐力N/mm² | 伸び | 絞り | 硬さHB |
590以上 | 390以上 | 25% | 55% | 170以下 |
※JIS G 4303参照
これらの数値は、SUS403が高強度を必要とする部品や構造物に適していることを示しています。
引張強さや耐力が高いということは、外力がかかっても簡単には破損しないことを意味し、長期間にわたる使用でもその性能が維持されやすいです。
さらに、SUS403は耐摩耗性にも優れているため、摩耗が激しい環境下での使用にも耐えることができます。
特に、タービンやポンプのシャフト、工具などの用途では、この耐摩耗性が重要な役割を果たします。
また、熱処理を行うことで、硬度を向上させることができるため、使用する環境や条件に合わせて、特定の性質を引き出すことが可能です。
このように、SUS403は機械的性質において柔軟に調整が可能で、特に耐久性が求められる分野で広く採用されています。
SUS403の特徴
SUS403の特徴を、メリットとデメリットにわけて詳しく解説します。
メリット
すでに触れていますが、SUS403のメリットとしては、以下のことがあげられます。
- 高い耐熱性
- 機械的強度が優れている
- 熱処理による特性向上
高い耐熱性
SUS403は、高温環境下でもその強度を保持することができるため、特に蒸気タービンやボイラーのような高温の環境での使用に適しています。
通常、鉄鋼材料は高温になると強度が低下することが多いですが、SUS403はその影響が少なく、高温下でも安定した性能を発揮します。
機械的強度が優れている
SUS403は、引張強さや耐力が高く、さらに耐摩耗性も備えているため、摩耗が問題となる機械部品や工具に適しています。
また、熱処理によって硬度をさらに向上させることができ、使用環境に合わせた調整が可能です。
熱処理による特性向上
SUS403は、熱処理により強度や硬度を向上させることができる点が大きなメリットです。
例えば、焼き入れや焼き戻しを施すことで、材料の硬度や耐摩耗性が強化され、使用用途に応じた柔軟な性能調整が可能です。
このため、機械加工部品や工具としても広く利用されています。
デメリット
一方、SUS403のデメリットとしては、以下のことがあげられます。
- 耐食性が低い
- 溶接性が低い
- 磁性を持つ
耐食性が低い
SUS403はクロムを含有しているため、一定の耐食性を持っていますが、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304やSUS316)に比べると耐食性が劣ります。
そのため、塩分や酸性環境にさらされる場所では、SUS403は錆びやすくなる可能性が高いです。
これにより、使用する環境を慎重に選ぶ必要があります。
溶接性が低い
SUS403は溶接性があまりよくありません。
溶接後に硬化するため、溶接部が脆くなりやすく、また溶接後の熱処理が必要となることが多いです。
このため、溶接が必要な用途では、SUS403はあまり適していないことが課題となることがあります。
磁性を持つ
SUS403は、マルテンサイト系ステンレス鋼であるため、磁性を持っています。
これは、磁場に敏感な機器や装置ではデメリットとなる場合があります。
例えば、電子機器や精密機械では、磁性を持つ材料が使用できないことが多いため、注意が必要です。
SUS403の用途
SUS403は、その高強度と耐熱性、耐摩耗性を活かし、さまざまな分野で使用されています。
以下に、その代表的な用途をまとめました。
蒸気タービンやボイラー部品 | SUS403は高温環境に強いため、蒸気タービンやボイラーのような高温機器の部品として使用されます。 特に、これらの機器では耐熱性と強度が非常に重要であり、SUS403はその要件を満たす理想的な材料です。 |
ポンプシャフト | ポンプシャフトは、摩耗が激しい環境にさらされることが多く、耐摩耗性が非常に重要です。 SUS403は、高い耐摩耗性と機械的強度を兼ね備えているため、長期間にわたって信頼性の高い性能を発揮します。 特に、産業用ポンプや機械加工装置のシャフト材料として広く採用されています。 |
工具 | SUS403の硬度や耐摩耗性を活かし、耐久性の高い工具として使用されることが多いです。 工具は繰り返し使用されるため、耐摩耗性が重要であり、SUS403はその性能を発揮します。 |
ボルトやナット | SUS403は、強度が求められるボルトやナットとしても使用されます。 特に、機械設備や産業機器では、ボルトやナットが高温や強い外力にさらされることが多く、SUS403の強度と耐熱性が必要とされます。 |
まとめ
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