SUS430の特徴(メリット・デメリット)|SUS304との違いも解説
SUS430はフェライト系ステンレスの代表的な種類で、比較的安価かつ加工性が高いことから、幅広い分野で使われています。
この記事ではそんなSUS430について、基本的な情報をまとめました。
目次
SUS430とは
SUS430は、クロムを16%以上含む、フェライト系ステンレスの代表的な種類のひとつです。
ニッケルを含まないため、ステンレスの中では耐食性はさほど高くありませんが比較的安価で加工性が高い特徴を持ちます。
また、焼き入れによって硬化はしませんが、耐食性や耐熱性において、マルテンサイト系ステンレスと比較して優れます。
そんなSUS430の化学成分や機械的性質は以下の通りです。
SUS430の化学成分
SUS430の化学成分 | ||||||
炭素(C) | ケイ素(Si) | マンガン(Mn) | リン(P) | 硫黄(S) | ニッケル(Ni) | クロム(Cr) |
0.12以下 | 0.75以下 | 1.00以下 | 0.040以下 | 0.030以下 | – | 16.00~18.00 |
※JIS G 4303:2012参照
SUS430の機械的性質
SUS430の機械的性質 | ||||||
耐力(N/mm2) | 引張強さ(N/mm2) | 伸び(%) | 絞り(%) | 硬さ(HBW) | 硬さ(HRBS又はHRBW) | 硬さ(HV) |
205以上 | 450以上 | 22以上 | 50以上 | 183以下 | 90以下 | 200以下 |
※JIS G 4303:2012参照
SUS430の特徴
すでに触れているように、SUS430は比較的安価かつ加工性が高い特徴を持ちます。
しかし、SUS430には他にも多くのメリット、またデメリットもあります。
メリット
メリットとしてまずあげられるのが、再三触れている加工性の高さです。
この大きな理由は、ニッケルを含まないことにあります。
これにより、切削や曲げなどを行いやすいです。
また、ニッケルはレアメタルであり、これを含まないことからコストを抑えることもできます。
その他、そもそもステンレスのため、一般的な鉄と比較すると耐食性が高くさびにくいです。
また、熱伝導率が低く、熱膨張といった熱による歪みなどが少なく、耐熱性にも優れるため、溶接を行いやすい点もメリットとしてあげられます。
デメリット
SUS430はニッケルを含まないことでメリットを持ちますが、これはデメリットを持つことにもなります。
それは、ニッケルを含むステンレスと比較すると耐食性が劣る点です。
また、耐熱性が高いメリットを持つSUS430ですが、475度脆化と呼ばれる注意点も持ちます。
これはフェライト系ステンレスに見られる、名称にもあるように475度付近まで加熱することで硬度が高くなる反面、靭性が低くなる現象です。
この結果、衝撃に弱く、脆くなってしまいます。
加えて、SUS430は焼き入れによって硬化はしないため、強度を求められる場面で使うことには向いていません。
なお、475度脆化した場合、600度~800度程度で加熱する熱処理で、解消する方法もあります。
その他には、SUS430は磁性を持っていて、これを不要とする場面で使うことにも向いていないため注意が必要です。
SUS430の加工性
SUS430の大きな特徴が加工性の高さです。
そんなSUS430の加工性について、以下でもう少し詳しくまとめました。
切削
ニッケルは強度や粘りを高める効果を持ち、これが多いほど切削性は低くなります。
SUS430は、そんなニッケルを含まないため、切削性が高いです。
溶接
SUS430は溶接も行いやすいです。
これは熱の影響を受けにくく、歪みも少なく変形もしにくいためです。
しかし、溶接をする際の温度、そして時間の調整には注意しなければいけません。
すでに触れているように、475度脆化現象により衝撃に弱くまた脆くなってしまうためです。
表面処理
表面処理については、目的や用途に合わせて選択することが可能です。
なお、表面処理の種類によって、細かく規格が分類されています。
SUS430-No.1 | つやのない白っぽい光沢のない表面の仕上げ。熱間圧延後に熱処理されている。 |
SUS430-2B | 適度に一定の光沢のある一般的な表面の仕上げ。市販品の大部分が該当する。 |
SUS430-HL | HLはヘアラインを意味する。細長く連続した研磨目を持った表面の仕上げ。 |
SUS430-BA | 鏡面に近い光沢のある表面の仕上げ。冷間圧延後に熱処理されている。 |
SUS304との違い
SUS430は、比較的安価かつ加工性が高いことから、よく使われます。
なお、よく使われるという点では、オーステナイト系ステンレスのSUS304もあげられます。
ここでは、そんなSUS430とSUS304の違いについて、簡単にまとめました。
結論、SUS430とSUS304の大きな違いは、ニッケルを含むか含まないかです。
すでに触れているように、SUS430はニッケルを含んでいませんが、SUS304は以下のようにニッケルを含んでいます。
SUS304の化学成分 | ||||||
炭素(C) | ケイ素(Si) | マンガン(Mn) | リン(P) | 硫黄(S) | ニッケル(Ni) | クロム(Cr) |
0.08以下 | 1.00以下 | 2.00以下 | 0.045以下 | 0.030以下 | 8.00~10.50 | 16.00~18.00 |
※JIS G 4303:2012参照
これにより、SUS304はSUS430と比較すると強度や粘りがあり、さらに耐食性に優れる特徴を持ちます。
そのため、SUS304はSUS430よりも、性能が全体的に優れていると言えます。
その他では、SUS430は磁性を持つ反面、SUS304は持たない点、また見た目においてSUS430よりSUS304の方が光沢がある点などがあげられます。
SUS430の用途
幅広い分野で使われているSUS430ですが、具体的には以下のような用途があげられます。
厨房機器 | 台所のシンク |
家庭用器具 | スプーン、フォーク |
家電 | 洗濯機のドラム |
自動車部品 | 排気管 |
建築材料 | 内装 |
一般的にSUS430は屋内において使われることが多く、屋外においてはSUS304が使われることが多いですが、上記のように幅広い分野で使われています。
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