バレル研磨とは|メリット・デメリットと4つの加工方法、バフ研磨との違いを解説

  • 投稿日:2023年5月22日(月曜日)
バレル研磨とは|メリット・デメリットと4つの加工方法、バフ研磨との違いを解説

とても効率が良く、安定した品質で、一度に大量の製品に研磨加工を施せる「バレル研磨」。
加えて「バレル研磨」は、作業者の研磨加工技術や熟練度に依存せず、多様な研磨加工に対応できるメリットもあります。

そのため、「バレル研磨」は、自動車産業や電子機器産業などで、バリ取り、平滑仕上げ、ミラー仕上げなど、様々な研磨加工の目的で利用されています。

この記事では、多様な研磨加工のニーズに対応できる「バレル研磨」の、概要やメリット・デメリット、加工方法やバフ研磨との違いなどについて、解説します。

バレル研磨とは

バレル研磨は、はじめに、ワーク(加工物)とメディア(研磨石や研磨材)、コンパウンド(研磨補助剤)を研磨の用途に応じた量や配合比で、バレル槽(研磨容器)に投入します。
次に、使用する機械によって異なりますが、バレル槽を回転させたり、撹拌したり、振動を与えたりします。

バレル研磨はこのような方法で、ワークとメディアを擦り合わせ、摩擦によって、バリを取ったりワークを磨き上げたりする研磨方法です。
一度に大量の製品を研磨できる上に、仕上がりも均一で、品質によるばらつきを少なくすることができます。

自動車産業や電子機器産業などにおいて、バリ取り、スケール取り、平滑仕上げ、ミラー仕上げ、R付けなどの研磨加工目的として、製造の最終工程に導入されています。

▼その他研磨加工についてご紹介している記事
研磨加工とは?種類や手順、研削との違いを解説

バレル研磨を成り立たせる3つの要素

先ほどもお伝えしましたが、バレル研磨は「バレル研磨機」「研磨石」「コンパウンド」の3つの要素で成り立っています。
また、これらの3つの要素を変化させることで、多様な研磨用途のニーズに対応可能です。
下記で、そんなバレル研磨を成り立たせる3つの要素について詳しく解説します。
 

バレル研磨機

バレル研磨機は、バレル槽を回転させたり、振動を与えたり、撹拌したりする機械です。
後で詳しく紹介しますが、下記の4つのタイプの機械があります。

  • ①回転式バレル研磨機
  • ②遠心式バレル研磨機
  • ③流動式バレル研磨機
  • ④振動式バレル研磨機

上記の機械はそれぞれ、研磨力、一度に研磨できる量、研磨できるワークの大きさや形状、自動化のしやすさ、研磨時間、導入コストなどの特性が異なります。
 

研磨石

研磨石は、砥粒を結合剤で固めたものです。

研磨石がバレル槽の中でワークと擦れ合う際の摩擦で研磨を行います。
なお、ワークとの摩擦で研磨石も摩耗しますが、摩耗により角が取れた砥粒は脱落し、研磨石表面に新しい鋭利な砥粒が露出するため、研磨力は持続します。

研磨石の材質には、セラミック、アルミナなどが利用され、形状は円錐など様々です。
ワークのサイズや表面の仕上がり具合によって、最適な研磨石を選定します。
 

コンパウンド

コンパウンドには液体と粉体があり、主成分として界面活性剤、他に防錆剤なども含まれます。
粗仕上げ用、中仕上げ用、光沢仕上げ用など、研磨加工の目的によって使い分けが必要です。
コンパウンドには下記のように5つの役割があります。

洗浄 ワークや研磨石の表面の汚れを落とし、研磨効率を上げる
潤滑 研磨石の滑りを良くして、ミラー仕上げの際など、ワーク表面を滑らかに仕上げる
防錆 錆びやすい研磨面を防錆剤で保護する
緩衝 界面活性剤により発生した泡がワークと研磨石のぶつかりを和らげる
水の軟化 水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの不溶性石灰塩が、ワークや研磨石の表面に沈着すると研磨効率が低下するため、水を軟化することで研磨効率の低下を防ぐ

バレル研磨のメリット・デメリット

バレル研磨のメリット・デメリットを、わかりやすくまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

バレル研磨のメリット

安価で、一度に大量の研磨加工を施せるのでコスパが良い バレル槽の容量を大きくすることで大量生産に対応できる
一度に大量の研磨加工を施しても、製品間のムラが少なく品質レベルを均一に保てる 同じバレル槽、同じ条件で一度に大量の研磨加工が行えるため、製品の品質にムラが出にくい
複雑な形状でも、研磨石が当たる部分に対しては研磨加工ができる 研磨石の大きさを変えたりすることで、複雑な形状への対応も可能
属人的な技術に依存せず、比較的短期間で研磨技術を習得できる 使用する研磨石やコンパウンドなどの条件を共有して再利用することができるため、作業者の技術や熟練度など、属人的な要素への依存が少ない
同じ研磨条件を再利用することで、毎回同じような仕上がりが期待できる 以前に使用した研磨石やコンパウンドの種類や配合比、研磨時間などの条件を再利用すれば、同じような仕上がりが期待できる
研磨石や機械などの条件を変えることで、バフ研磨によるミラー仕上げに近い仕上がりになる 研磨条件によっては、バフ研磨並みの鏡面加工が施せる

バレル研磨のデメリット

ワーク同士がぶつかり合って、製品の表面にキズやへこみができることがある バレル槽に複数のワークを投入する場合は、ワーク同士がぶつかって表面にキズや打コンができることがある
複雑に入り組んだ形状で、研磨石が当たらない部分がある場合は、研磨ムラができやすい バレル研磨は研磨石との摩擦で研磨されるので、研磨石と接触しない部分は未処理のままになり、研磨ムラができる
大きなワークの場合は、そのワークが入る大きなバレル槽を用意する必要がある バレル研磨を行うには、ワーク全体がすっぽりと入る大きさのバレル槽が必要
小ロットの場合はあまりコスパが期待できないことがある 大きなバレル槽で一度に大量のワークを研磨加工することで、コスパが良くなる
一度に大量のワークを研磨加工する際に、研磨条件が適切でない場合や、ワーク同士の衝突によるキズやへこみなどで、大量の不良品が発生することがある バレル研磨は一度に大量のワークに研磨加工を施せる点がメリットだが、一方で、研磨条件が適切でない場合や、ワーク同士の衝突でできるキズや打コンにより、たくさんの不良品が発生することがある

バレル研磨の4つの加工方法

先ほども少し触れましたが、バレル研磨機には4つのタイプがあります。
この種類に応じて、バレル研磨の加工方法も4つに分けられます。

  • ①回転式バレル研磨機
  • ②遠心式バレル研磨機
  • ③流動式バレル研磨機
  • ④振動式バレル研磨機

①回転式バレル研磨

ドラム式洗濯機が、内部でドラム回転させながら洗濯するのと同じように、バレル槽を回転させながらワークとメディアを擦り合わせて研磨する方法が、回転式バレル研磨です。

バレル槽の回転に伴って、ワークとメディア、コンパウンドの混合物の表面付近に流動層ができます。
その流動層を滑り落ちる際に、ワークとメディアが擦れ合うことで研磨が行われます。

このバレル研磨機は、単純な構造なので導入コストが安価で、故障も少なく操作も簡単で、メンテナンス性にも優れています。

ただし、加工には比較的時間がかかり、大きなワークの研磨や大量生産にはあまり向いていません。
また、フタで密閉してから研磨加工を行うので、加工中に外からワークを確認できず、自動化も困難です。

②遠心式バレル研磨

観覧車の客室のように、複数のバレル槽が取り付けられた装置が公転し、さらに個々のバレル槽が公転と逆向きに自転するのが、遠心式バレル研磨です。

高速回転で公転することで、重力よりはるかに強い遠心力がかかります。
そして、バレルの自転によりできた流動層の勾配を、強力な遠心力がかかる方向に向かって、ワークが勢いよく滑り落ちていきます。
滑り落ちる際のメディアとの摩擦で研磨が行われます。

バレル式研磨加工の中で、最も研磨力に優れ、比較的短時間で、精度の高い仕上げ研磨から重研磨まで、幅広い研磨加工が行えます。

しかし、バレル槽が密閉されているので、研磨加工中にワークの状態を外から確認することはできません。
また、比較的小さめの製品の研磨に適しており、一度に研磨できる量が限られるので、大量生産にも向きません。
加えて、自動化は比較的容易に行えますが、導入コストも高価です。

③流動式バレル研磨

洗濯機のように、バレル槽の底面に取り付けられた回転盤が回転することで、ワークとメディア、コンパウンドの混合物が流動し、ワークとメディアが擦れ合うことで研磨する方法が、流動式バレル研磨です。

研磨加工中でも、洗濯機をのぞき込むような感じで、ワークの状態を確認できます。
また、対応できるワークの大きさは小型から大型、数量に関しては少量から大量まで、幅広いニーズに対応できます。

④振動式バレル研磨

バレル槽全体を振動させ、中でワークとメディアが擦れ合うことで研磨する方法が、振動式バレル研磨です。
バレル槽の形状により、サークルタイプとボックスタイプの2種類あります。

バレル槽の上面が大きく開放しているので、研磨加工中にワークの状態を確認できて、大きいワークや長めのワークの出し入れも可能です。
また、一度に大量の研磨加工を行え、自動化もしやすいです。

バレル研磨とバフ研磨の違い

バフ研磨はバレル研磨と同様に、製品の仕上げの工程で、バリ取りや鏡面加工など、製品の付加価値を高める研磨方法です。

しかし、バフ研磨はこれまで解説してきたバレル研磨とは異なり、「バフ」と呼ばれる綿やウールなど、柔らかい素材をホイール状に束ねたパーツを利用します。
この「バフ」をグラインダーに装着して研磨を行います。

簡単に言うと、研磨剤を塗布した「バフ」を高速回転させながらワークの表面に押し当てて研磨を行う、という手順となります。

バフ研磨のメリット
  • 硬い砥石を使う研磨に比べて、バフ研磨は柔らかい素材を使用して磨き上げるため、ミラー仕上げなどのように、表面がとても美しく仕上がる
  • 手作業で行うため、複雑な形状のワークにも対応可能
  • 大型のワークでも研磨加工を施せる
バフ研磨のデメリット
  • 手作業のため、作業者の技術や熟練度に依存しており、習得に時間がかかる
  • 作業者の技術や熟練度により、仕上がりが異なるため、品質が安定しにくい
  • 手作業のため、大量生産に向いていない

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この記事ではバレル研磨について解説してきました。

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