アルミ合金A2017とは?特徴や用途・他のジュラルミンとの違いを解説
アルミニウム合金には多くの種類が存在します。
この記事では、その中でもジュラルミンと呼ばれるA2017について、特徴や用途、また他のジュラルミンとの違いなどについて解説します。
目次
A2017(ジュラルミン)とは
A2017は、ジュラルミンと呼ばれるアルミニウム合金の種類のひとつです。
主に銅(Cu)とマグネシウム(Mg)が含まれていることが特徴です。
銅(Cu)とマグネシウム(Mg)の含有率(単位%) | |
銅(Cu) | 3.5〜4.5 |
マグネシウム(Mg) | 0.4〜0.8 |
これにより、アルミニウムがもともと持っている軽量さに加えて、強度を持たせることを可能としています。
また、溶接性には優れないものの、切削性に優れていたり、さらには鍛造したりすることもできます。
そんなA2017は、上記の特徴から航空機部品や機械部品といった、工業製品に広く使用されています。
基本情報として、以下にA2017の化学成分と物理的性質をまとめました。
化学成分
A2017の化学成分(単位%) | |||||||
シリコン(Si) | 鉄(Fe) | 銅(Cu) | マンガン(Mn) | マグネシウム(Mg) | クロム(Cr) | 亜鉛(Zn) | チタン(Ti) |
0.2〜0.8 | 0.7以下 | 3.5〜4.5 | 0.4〜1.0 | 0.4〜0.8 | 0.1以下 | 0.25以下 | 0.15以下 |
物理的性質
A2017の物理的性質 | |
融点 | 約660℃ |
ブリネル硬さ | 105HB |
密度 | 2.79 |
ヤング率 | 72.6GPa |
引張強さ | 425N/mm² |
耐力 | 275N/mm² |
熱伝導率 | 201W/m・K |
せん断強さ | 260N/mm² |
疲れ強さ | 125N/mm² |
A2017(ジュラルミン)の特徴
A2017の特徴を、メリットとデメリットにわけて解説します。
メリット
A2017は、何と言っても軽量さに加えて強度を兼ね備えている点が大きな特徴です。
まず軽量さについてですが、先ほど見たようにA2017の比重は2.79です。
鋼の比重が7.85、ステンレスの比重が7.93であることと比較すると、その差は歴然です。
また、強度についてもA2017は105HBとなっていて、最も流通しているアルミニウム合金A5052が68HBであることから、優れていることがわかります。
強度については、使用する環境によっては鋼やステンレスに匹敵します。
加えて、A2017は加工性に優れていることも特徴のひとつです。
一般的に強度を持つと切削性には優れなくなりますが、A2017は切削性に優れていて、実際に現場でもマシニングセンタなどで削られることが多いです。
また、A2017は鍛造することもできます。
デメリット
先ほど少し触れましたが、A2017は溶接性に優れない特徴を持ちます。
これは、アルミニウム全般に言えることですが、熱伝導率が高いうえ酸化被膜を生成することが理由です。
アルミニウムは、大気中の酸素と結びつくことで表面に酸化被膜を生成します。
この酸化被膜は融点が2000℃で、母材であるA2017の融点約660℃と大きな開きがあることがわかります。
そのため、溶接時には酸化被膜を取り除かなければ、母材が溶け落ちたり歪みが生じたりしてしまいます。
また、熱伝導率が高いことから母材の熱が逃げやすく、溶け込みが安定しにくいといったこともあげられます。
加えて、耐食性に優れないことも、A2017の特徴のひとつです。
これは、A2017は銅(Cu)が含まれていて、酸化しやすいためです。
アルミニウムの中でも耐食性に優れないため、使用する環境によってはアルマイトといった耐食処理が不可欠となります。
A2017(ジュラルミン)の用途
A2017は、アルミニウムの持つ軽量さに加えて、強度を兼ね備えています。
そのため、工業製品に広く使用されています。
具体例としては、以下があげられます。
まず、航空機やロケット部品、船舶や油圧部品などです。
また、金型や歯車、ネジ類などもあげられます。
その他では、スーツケースや窓枠、テントや椅子といったアウトドア用品などもあげられます。
A2017(ジュラルミン)と他のジュラルミンとの違い
そもそもジュラルミンとは、主に銅(Cu)とマグネシウム(Mg)が含まれているアルミニウム合金を指します。
この記事では、その中でもA2017について解説してきましたが、他に超ジュラルミンと呼ばれるA2024と超々ジュラルミンと呼ばれるA7075もあります。
A2017と、それらとの違いについてご紹介します。
A2024(超ジュラルミン)
A2024は、A2017と比較すると銅(Cu)とマグネシウム(Mg)の含有率が高いアルミニウム合金です。
A2024とA2017の銅(Cu)とマグネシウム(Mg)の含有率(単位%) | ||
銅(Cu) | マグネシウム(Mg) | |
A2024 | 3.8~4.9 | 1.2~1.8 |
A2017 | 3.5〜4.5 | 0.4〜0.8 |
そのため、A2024はA2017と比較すると強度が優れていること、また切削性に優れていることが特徴です。
わかりやすく言うと、A2017の上位互換といったイメージです。
そのためA2024は、A2017では強度が不十分な場合に使用されます。
なお、銅(Cu)の含有率が高いことから、当然耐食性には優れません。
A7075(超々ジュラルミン)
A7075は、A2017と比較するとマグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)の含有率が高いアルミニウム合金です。
A7075とA2017の銅(Cu)とマグネシウム(Mg)と亜鉛(Zn)の含有率(単位%) | |||
銅(Cu) | マグネシウム(Mg) | 亜鉛(Zn) | |
A7075 | 1.2~2.0 | 2.1〜2.9 | 5.1〜6.1 |
A2017 | 3.5〜4.5 | 0.4〜0.8 | 0.25以下 |
なお、当然A2017と同じく、銅(Cu)が含まれてもいます。
そんなA7075は、熱処理を行うことで現存するアルミニウム合金の中で最も強度を持たせることを可能としています。
しかしその反面、切削性や溶接性、また耐食性にも優れません。
耐食性については、使用する環境によっては応力腐食割れ(SCC)の対策を行う必要があります。
まとめ
この記事ではアルミニウム合金の種類のひとつ、A2017について解説してきました。
部品製作を依頼する際などには、ぜひ参考にしてみてください。
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