アルミの溶接が難しい3つの理由&加工方法と加工時のポイント

  • 投稿日:2024年5月23日(木曜日)
アルミの溶接が難しい3つの理由&加工方法と加工時のポイント

アルミは、加工がしやすい、軽いといった特徴を持つことから、非常に幅広い分野で使用されています。
しかし、加工がしやすいといっても、溶接は難しいとされています。
この記事では、そんなアルミの溶接における、難しいとされている理由や具体的な加工方法などについて解説します。

アルミの溶接が難しい理由

アルミの溶接が難しいとされている理由には、以下のようなことがあげられます。
 

  • 融点が低い
  • 熱伝導率が高い
  • 酸化被膜に覆われている
  • 歪みが発生しやすい
  • 割れが発生しやすい

融点が低い

アルミは、融点が約660度と、1000度を超える鉄やステンレスなどと比較すると、かなり低いです。
そのため、溶接を行うと、すぐに母材が溶け落ちてしまいます。

熱伝導率が高い

アルミは他の金属と比較すると熱伝導率が高いため、溶接によって全体が高温になります。
これにより、先ほど触れた融点の低さも相まって、溶けるスピードが徐々に速くなってしまいます。

酸化被膜に覆われている

アルミは、他の金属とは異なり、空気に触れるとすぐに酸化被膜を作ります。
この酸化被膜は、融点が約2000度と、アルミ自体の融点(約660度)と比較して、1300度以上も高いです。
そのため、アルミの溶接は、酸化被膜を除去しなければ、うまく行えません。

歪みが発生しやすい

先ほど、アルミは熱伝導率が高いことについて触れましたが、これは歪みが発生しやすい原因になります。
そのため、当然溶接によっても、歪みが発生する場合があります。

割れが発生しやすい

アルミの溶接においては、ブローホールと呼ばれる小さな空洞が現れます。
これは、溶接によって窒素や一酸化炭素、水素などのガスを巻き込むことで現れますが、アルミにおいては酸化被膜の不純物や大気中の水分が原因となります。
そして、このブローホールが現れることで、溶接部分の強度が低下して、割れが発生する場合があります。

アルミの2つの溶接加工方法

アルミの溶接は、主に以下の2種類の方法で行われます。
 

  • TIG溶接
  • 半自動溶接(MIG溶接)

TIG溶接

アーク溶接の種類のひとつで、アルミの溶接に用いられる、最も一般的な方法です。
TIGとは“Tungsten Inert Gas”の略で、“タングステンと不活性ガスによる溶接”を意味します。

融点が3380度と金属の中でも最も高いタングステンを使用した電極と母材に電流を流し、発生させたアーク放電による熱を利用して溶接する方法です。
これにより、安定してアーク放電を発生させることができます。
また、アルゴンガスやヘリウムガスなどをシールドガスとして溶接部分に吹き付けることで大気をシャットアウトし、酸化や不純物の混入を防ぐこともできます。

そのため、手動で行うこともあり細かい溶接ができ、スパッタ(火花)も発生しないため、仕上がりをきれいにすることが可能です。

半自動溶接(MIG溶接)

先ほどのTIG溶接と原理は同じですが、自動で行うことができる点で異なります。

半自動溶接は、ワイヤ状の電極が溶加材を兼ねていて、これが名前の通り自動で供給されます。
そのため、TIG溶接と比較すると、スピードが速いです。
しかし、スパッタ(火花)はTIG溶接より発生するため、仕上がりのきれいさは劣ります。

なお、半自動溶接には使用する不活性ガスによって種類が分かれますが、アルミにおいては酸素含有量の少ないアルゴンガスを使用するMIG溶接が適しています。

CO2溶接 炭酸ガスを使用し、主に鉄を対象に使用される
MAG溶接 炭酸ガスとアルゴンガスの混合ガスを使用し、主に鉄やステンレスを対象に使用される
MIG溶接 アルゴンガスを使用し、主にアルミやステンレスを対象に使用される

アルミの溶接加工を行う際のポイント

アルミの溶接を行う際には、以下のようなことがポイントとしてあげられます。
 

  • 交流TIG溶接で行う
  • トーチの送り速度を少しずつ速める
  • パルス機能を使用する

交流TIG溶接で行う

TIG溶接には、電流の向きで直流と交流の2種類がありますが、アルミにおいては後者の交流で行うことがポイントになります。
これは、クリーニング作用を利用するためです。

直流TIG溶接 電極側が“-(陰極)”、母材側が“+(陽極)”と一定の標準的な方法
交流TIG溶接 母材側を“-(陰極)”、電極側を“+(陽極)”、これを交互にして繰り返す方法

交流TIG溶接によって、母材側を“-(陰極)”にすることでクリーニング作用が働き、これにより酸化被膜を除去することができます。
しかしこの状態では、電極側が“+(陽極)”、つまり高温になり消耗してしまいます。
そこで、“-(陰極)”と“+(陽極)”を交互にして繰り返すことで、アーク放電を安定させ、これを交流TIG溶接と言います。

トーチの送り速度を少しずつ速める

アルミの溶接を行ううえでは、加熱器具であるトーチの送り速度を少しずつ速めることもポイントです。

アルミの溶接が難しいとされている理由としては、融点が低いこと、また熱伝導率が高いことがあげられます。
これによって、アルミの溶けるスピードは徐々に速くなってしまいます。

そのため、常に一定の速度でトーチを送るとビード幅が広がっていき、きれいな仕上がりになりません。
母材が溶けている部分の大きさ、つまり溶融プールの大きさを確認しながら溶接を行うことがポイントです。

パルス機能を使用する

先ほどの、トーチの送り速度を少しずつ速めることに関係してきますが、パルス機能を使用することも、アルミの溶接におけるポイントとしてあげられます。

パルス機能を使用することで、高い電流と低い電流を、交互に流すことができます。
これによって、高い電流の際に母材を溶かし、低い電流の際に溶融プールを冷やして固めることができ、ビード幅を安定させることが可能です。
また、パルス機能の使用は、母材の溶け落ちを防いだり溶け込みを深くできたりもします。

まとめ|部品製作のことならJig Match

この記事では、アルミの溶接について解説してきました。
アルミの溶接は、一般的に難しいとされているため、この記事で基本的な知識を身に付けていただけますと幸いです。

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