アルマイト処理とは?種類やメリット・デメリットを徹底解説!
「アルマイト処理って実際どういったもの?」
「アルマイト処理はどういったときに活用するべきなの?」
「アルマイト処理の種類はなにがあるの?」
アルマイト処理の名前を聞いたことがあっても、適切な用途やさまざまな種類を知らない人は非常に多いです。
アルマイト処理の概要を知らなければ、実際に利用した際に満足した出来にならない場合も考えられます。
そこでこの記事では、アルマイト処理に詳しくない人でも網羅できるよう、アルマイト処理の用途や種類、メリット・デメリットについて紹介していきます。
また、アルマイト処理の工程にも触れているため、製品の納期について話し合う際の参考にもなるでしょう。
適したアルマイト処理の活用ができるよう、ぜひ参考にしてみてください。
目次
アルマイト処理とは
アルマイト処理とはいったいどういうものなのでしょうか。
ほかの加工技術と同じく、アルマイト処理にも適切な加工場面があります。
アルマイト処理について、以下の2つを紹介します。
- アルマイト処理の特徴
- アルマイト処理の用途
アルマイト処理の加工を依頼する前に、概要を確認しておきましょう。
アルマイト処理の特徴
アルマイト処理は、日本発祥の加工技術で、厚く丈夫な酸化被膜でコーティングする技法です。
アルミニウムに酸化被膜が生成される技術から、さらに「被膜製法」で「アルミニウム並びにアルミニウム合金の防銹法(ぼうしゅうほう)」の特許出願がおこなわれました。
未加工品に比べ表面の硬度が高くなり、傷や摩耗に強くなる特徴があります。
アルマイト処理の用途
アルマイト処理は、アルミニウムのやわらかく化学的な影響や機械的な損傷で腐食が早い欠点を、補うための加工です。
つまり、アルマイト処理はアルミニウムに対しておこなう防錆処理といえます。
耐食性や耐摩耗性を求められる製品や部品に効果的で、バイクや自動車、電動工具のシリンダーなどに利用されています。
アルマイト処理の概要について紹介しましたが、簡単にいうとアルミニウムに行う表面処理です。
なお、表面処理に関しては他にもさまざまな種類が存在します。
詳しくは以下の記事で紹介しているので、ぜひ合わせて参考にしてみてください。
▼表面処理についての記事
表面処理の種類ごとに用途、目的、加工方法、適した材質などを紹介
アルマイト処理の種類
アルマイト処理にはたくさんの種類があります。
種類によって特性が多少変わるため、用途も異なります。
代表的な以下の4つのアルマイト処理の種類についてまとめました。
- 白アルマイト処理(普通アルマイト処理)
- カラーアルマイト処理(着色アルマイト処理)
- 黒アルマイト処理
- 硬質アルマイト処理
それぞれの特徴や用途を知ることで、これから加工する製品はどれが適切なのかが分かります。
ぜひ参考にしてみてください。
白アルマイト処理(普通アルマイト処理)
白アルマイト処理は、普通アルマイト処理ともいわれ、染料で染めていない一般的な無色のアルマイト処理を指します。
少し白っぽく見える場合がありますが、実際はアルミ素材のそのままの色に近いです。
汎用性が高く、工業製品や家庭用品など、さまざまな場面で利用されています。
色に重きを置かず、硬度を高くしたり表面の変色、腐食を防いだりする用途で使用したい時に活用するとよいでしょう。
カラーアルマイト処理(着色アルマイト処理)
カラーアルマイト処理は、着色アルマイト処理ともいわれています。
アルマイト処理後、表面にできた孔へカラー染料や顔料を吸着させる着色処理技法です。
染料の温度や湿度、アルマイト皮膜の厚さによって色の調整ができます。
色の選択肢が幅広いため、モバイル機器やインテリア雑貨、化粧品容器など装飾品に使用されるケースが多いです。
黒アルマイト処理
黒アルマイト処理は、カラーアルマイト処理の後に黒色の染料や顔料を使用して加工する技法です。
対象となる素材の加工や材質の状態により、仕上がりの色味やつやの有無が選択できます。
また化学薬剤を使用することで、さらに光沢の調整が可能です。
黒アルマイトは、特に装飾部品や光学機器に活用されています。
硬質アルマイト処理
硬質アルマイト処理は、通常のアルマイト処理よりも硬く厚い皮膜を生成したものです。
硫酸浴の低温で電解処理をおこない、対象物の表面硬度を上げ、膜厚は30μm程度にまで厚くすることが可能です。
硬質アルマイトの特性から、耐摩耗性や硬度が必要な製品や部品に活用される場合が多く、自動車や航空機の部品などに使われています。
アルマイト処理のメリット
アルマイト処理には多くのメリットがあります。
アルミニウムの欠点を補うメリットが豊富なため、アルミニウムを幅広く使用しやすいです。
アルマイト処理のメリットは、以下の5つです。
- 硬度・耐摩耗性の向上
- 腐食を防ぐ
- 絶縁性がある
- 熱伝導率が低くなる
- カラーが豊富
メリットを確認し、アルマイト処理を有効活用する参考にしましょう。
硬度・耐摩耗性の向上
アルマイト処理の大きな特徴として、硬度や耐摩耗性の向上が挙げられます。
硬い酸化被膜によって表面の硬度が高まり、摩耗を防ぎます。
特にアルミニウムは金属の中でもやわらかい特徴があるため、硬度を求めてアルマイト加工する場面が多くみられます。
強い力がかかる部分に使われる部品や製品に活用すると有効的でしょう。
腐食を防ぐ
アルマイト処理の対象素材であるアルミニウムは、自然酸化皮膜だけの状態ではすぐに腐食が進むものがあります。
また、アルミニウムはやわらかいため傷がつきやすく、傷がついたところからの錆や腐食してしまうケースが多いです。
アルマイト処理は耐食性が高められるため、製品や部品を長く美しく使っていくためにも重要な加工といえるでしょう。
絶縁性がある(電気が流れない)
加工前のアルミニウムは電気が流れる素材ですが、アルマイト処理をすることで絶縁され、電気が流れなくなります。
絶縁性の高い部品や製品が必要な際に有効的で、多くの電子部品に活用されています。
しかし、電解浴の種類や電解条件、皮膜の種類や封孔などの処理条件によって絶縁性が異なるため、注意が必要です。
熱伝導率が低くなる
加工前のアルミニウムは、熱伝導性が高い素材ですが、酸化膜により熱伝導率が下がり約3分の1といわれています。
また、遠赤外線の放射性が高いという特性を持っているため、ヒートシンクの放熱性向上処理をおこなう際にも活用されています。
カラーが豊富
カラーアルマイト処理で紹介した通り、酸化皮膜にできた孔に染料を吸着させると、多様な色のアルマイトが製造できます。
特にほかの加工と異なる点では、色味の調整ができることです。
金属に色味を出す方法は比較的少ないため、アルマイト処理はカラーバリエーションを出す際に重宝される手法といえるでしょう。
アルマイト処理のデメリット
アルマイト処理にはデメリットもあります。
デメリットを理解しておくことで、対策も取りやすいため、確認しておきましょう。
アルマイト処理のデメリットは以下の通りです。
- 皮膜がはがれやすい
- 脱色しやすい
デメリットに合わせて対策もまとめました。
デメリットが不安に感じた際は、依頼する業者に確認しながら加工を進めていくとよいでしょう。
被膜がはがれやすい
通常のアルマイトは100℃程度でクラックが生じます。
また、アルマイトには柔軟性がありません。
これにより、加工時や加熱時に剥がれてしまう場合があるため注意しましょう。
アルマイトの皮膜がはがれてしまった際は、一度アルマイト処理を剥離し、剥がれた部分を機械加工などで修正したあと、再度アルマイト処理が必要です。
脱色しやすい
アルマイト処理は、カラーが豊富な半面、脱色しやすいデメリットがあります。
紫外線や高温が原因といわれており、ほかにも空気中の水分が原因になることもあります。
これらは染料分子構造が壊されていくために起こってしまいます。
脱色をなるべく防止するためには、アルマイト皮膜の孔の中に染料をたくさん入れ手染色することで、色を残すとよいでしょう。
アルマイト処理の工程
アルマイト処理は、前工程・アルマイト処理・後処理の大きく分けて3つの工程があります。
美しいアルマイト処理をするには、どの工程も必要不可欠です。
アルマイト処理の工程を理解しておくと、製品のある程度の納期が分かり、依頼する業者とも話し合いがスムーズにできるでしょう。
ぜひ参考にしてみてください。
前処理
アルマイトの前処理では、5つの処理工程があります。
- 脱脂処理
- エッチング
- スマット除去
- 化学研磨
- 化学梨地
なお、アルマイト処理では、最初から最後まで製品を浴槽に投入するため、投入する際に製品を固定する治具が必要です。
前処理の5つの工程を処理内容と合わせて表にまとめました。
工程 | 処理内容 |
脱脂処理 | アルミニウム表面の油分を取り除く処理。均等なアルマイト処理をする際に必要な洗浄の工程。溶剤やアルカリ、酸などで脱脂をする。 |
エッチング | 水酸化ナトリウムなどを使用し、アルミニウムの表面を溶解させる作業。溶解させることで、小さな傷の除去や表面に残っていた油分を落とす。 |
スマット除去 | エッチングの際にアルカリ溶液で溶解しない銅や鉄、ケイ素などをスマットといい、薄めた硝酸溶液で除去する処理を指す。 |
化学研磨 | 研磨溶液を使用し、アルミニウムの表面を溶かす。細かな凹凸を平らにするため、アルミニウムを光沢のある状態にする。 |
化学梨地 | アルミニウムの皮膜を壊すイオンを持つ塩化物やフッ化物が含まれた溶液を使用し、全体に光沢のない表面を作る処理。 |
アルマイト処理には前処理が不可欠です。
前処理を怠ると、しっかりとアルマイト処理がされず、ボロボロな表面になってしまいます。
アルマイト処理
アルマイト処理の工程は、前処理が終わった製品に対して、陽極酸化処理をおこなう処理方法です。
製品を、前処理段階で取り付けておいた治具につるしたまま電解槽の中へ投入し、電流を流します。
処理をしている製品は、電解によってアルマイト皮膜が生成されます。
皮膜の厚さを調整するのもこの処理段階です。
後処理
後処理はアルマイト処理の種類によって異なりますが、主な工程は3つです。
- 染色
- 電解着色
- 封孔処理
アルマイト処理をした直後は、アルミニウムの表面にたくさんの小さな孔が空いています。
それを利用してカラーアルマイトをおこなっていきます。
3つの工程を処理内容と合わせて表にしました。
工程 | 処理内容 |
染色 | カラーアルマイト処理の際は、染色が必要。無数の小さな孔に染料を染み込ませることで、カラーアルマイトをおこなう。 |
電解着色 | アルマイト処理が終了後、さらに別の溶液につけて二次電解処理をおこなう。溶液中のアルミ以外の金属分子を吸着させ、ステン、シャンパンゴールド、ブロンズ、ブラックなどの色を表現する。 |
封孔処理 | アルマイト処理後の小さな孔を加圧水蒸気や熱水により塞ぐ処理。汚れや腐食を防ぎ、耐汚染性、耐候性、耐酸性を持たせる。 |
無数の孔を塞ぎ、水洗いをすると工程が終了です。
治具を取り外したら製品が完成します。
まとめ
アルマイト処理の用途や種類、メリット・デメリットについて紹介しました。
アルマイト処理にはさまざまな種類があり、用途によって使い分ける必要があると分かってもらえたのではないでしょうか。
また、メリット・デメリットを理解しておくと、使用する製品や部品にアルマイト処理が向いているのかいないのかを理解できます。
事前に理解しておくことで、失敗やリスクを減らすことも可能です。
独自で判断がつかない場合には、専門業者に確認すると最適な方法を提案してくれるでしょう。