穴あけ加工とは?その種類から使われる工作機械や工具・加工時の注意点を解説

  • 投稿日:2023年7月10日(月曜日)
穴あけ加工とは?その種類から使われる工作機械や工具・加工時の注意点を解説

穴あけ加工は、製造業の中でも最も基本的な加工方法のひとつです。
この記事では、そんな穴あけ加工の種類、用いる工作機械、切削工具の選択、さらにはフライス盤や旋盤で作業を行う上での注意点などについて、詳しく解説します。

穴あけ加工とは

穴あけ加工とは、工作物に穴をあけることを主目的とする加工方法のことで、さまざまな工業製品の製造に欠かせない工程のひとつです。
例えば、機械部品の組み立てに必要なボルト穴やピン穴、電気・電子部品の組み立てに必要なリード線通し穴やネジ穴など、多岐にわたり用いられています。
穴あけ加工は、その目的や必要な精度、加工材料の特性などにより、さまざまな種類の工具や機械を使用します。

穴あけ加工の種類

穴あけ加工には、目的や必要な精度、加工材料の特性などに応じて、さまざまな種類があります。
それぞれ異なる条件を満たすために存在しているため、ここではそんな穴あけ加工の種類について解説します。

穴あけ加工の種類
  • ドリル加工
  • リーマ加工
  • タップ加工
  • ザグリ加工
  • ブローチ加工

ドリル加工

ドリル加工は最も基本的な穴あけ加工で、ドリルと呼ばれる回転切削工具を使用して、工作物に円形の穴をあける方法です。
このときドリルの形状や切削条件は、工作物の材質や必要な穴の大きさまた深さに応じて選びます。

リーマ加工

リーマ加工はすでにあけられた穴の内径を微調整するための加工方法です。
リーマという特殊な切削工具を使用して、精度の高い穴径や良好な内面粗さを得ることができます。

タップ加工

タップ加工は内ねじを切る加工方法です。
タップと呼ばれる工具を使用して、穴の内壁にねじ山を形成します。
ねじのピッチや形状は、タップの形状により決まります。

ザグリ加工

ザグリ加工は、すでにあけられた穴口を斜めに広げるための加工方法です。
これにより、ボルトなどを穴に挿入しやすくしたり、Oリングを設置するための溝を作ったりすることができます。

ブローチ加工

ブローチ加工は、ブローチと呼ばれる特殊な切削工具を使用して、穴の形状を変える方法です。
一連の切刃が配列されたブローチを押し通すことで、鍵穴のような特殊な形状の穴をあけることができます。

穴あけ加工で使われる機械

穴あけ加工には様々な種類の工作機械が用いられます。
それぞれの工作機械は異なる特性や機能を持つため、目的とする穴あけ加工に応じて適切なものを選択することが重要です。

穴あけ加工で使われる工作機械の種類
  • ボール盤
  • フライス盤
  • 旋盤
  • マシニングセンタ
  • ターニングセンタ
  • 放電加工機

ボール盤

ボール盤はドリルを固定し、工作物を動かして穴あけ加工を行う機械です。
特に一般的な穴あけ作業において広く用いられています。

フライス盤

フライス盤はドリル以外にもさまざまな切削工具を使用することができ、複雑な形状の穴をあけることも可能です。

旋盤

旋盤は工作物自体を回転させ、固定したドリルで穴をあける機械です。
特に円筒形状の工作物に対する穴あけ加工に適しています。

▼旋盤についての記事
旋盤とは?構成や種類・加工方法や加工対象を解説

マシニングセンタ

マシニングセンタはコンピュータ制御のもとで自動的に加工を行う機械で、複数の切削工具を自由に交換しながら穴あけ加工を含む複雑な形状の加工が可能です。

ターニングセンタ

ターニングセンタは旋盤の一種で、複数の工具を交換して使用することが可能です。
穴あけ加工だけでなく、外径加工やねじ切り等のさまざまな加工を一台で行うことができます。

放電加工機

放電加工機は電気放電を利用して材料を加工する機械で、特に硬い材料や複雑な形状の穴あけ加工に適しています。

穴あけ加工で使う切削工具の種類

穴あけ加工では、さまざまな条件に応じて、最適な切削工具を選ぶことが重要です。
主な切削工具とその種類について、詳しく解説します。

穴あけ加工で使われる切削工具の種類
  • ドリル
  • タップ
  • リーマ
  • ブローチ

ドリル

ドリルは穴あけ加工で最も一般的に使用される工具で、種類も多岐にわたります。
 

  • ツイストドリル
  • センタードリル
  • ガンドリル
  • ザグリドリル

 

ツイストドリル

ツイストドリルはその名の通りツイスト(螺旋)状になっており、その形状がチップ(切りくず)を穴の外へと排出します。
ツイストドリルの切削部は2枚刃で、ほぼ全ての材料に対応可能です。
また、ハイス(高速度鋼)やカーバイドなど、材質によってさまざまな種類があります。
 

センタードリル

センタードリルは主に旋盤加工における中心穴の加工に使用されます。
工作物の中心を正確に出すための道具で、短くて剛性があり、深い穴を掘ることはありません。
 

ガンドリル

ガンドリルは非常に深い穴を正確に加工するためのドリルです。
刃先に冷却剤を直接供給することで、加工中の高温化を防ぎながら、長い穴を直線的に掘ることができます。
自動車部品など、深くて直線的な穴が必要な部品の製造に用いられます。
 

ザグリドリル

ザグリドリルは、すでにある穴をさらに広げるためのドリルです。
刃が螺旋状になっており、一度に大きな断面を削り取ることができるため、大径の穴あけに用いられます。

タップ

タップは内部ねじを切るための工具で、主に以下の種類があります。
 

  • スパイラルタップ
  • ポイントタップ

 

スパイラルタップ

スパイラルタップは、ねじ切り時に発生する切りくずを穴の外へ排出するために、刃部がスパイラル形状をしています。
この形状により、ねじ切り精度を高めることができます。
 

ポイントタップ

ポイントタップは、穴の底までねじを切ることが可能なタップです。
穴の深さが制限された状況や、底ねじを必要とする場合に使用されます。

リーマ

リーマはすでに穴を開けた後で、穴の内径の寸法精度を上げるため、または表面の粗さを改善するための工具です。
とくに、精度が求められる部品の加工においては、ドリルで開けた後にリーマで仕上げることが一般的です。

ブローチ

ブローチは、特殊な形状の穴を一度に加工する工具で、刃が連続して配置されています。
ブローチは一度に多くの刃が材料に接触するので、非常に高精度な加工が可能です。
キーウェイやスプラインといった特殊な形状を持つ穴や、大径の穴の加工に用いられます。
ただし、ブローチは専用のブローチングマシンを必要とし、工具自体も高価なため、大量生産される部品に対して使用されることが多いです。

穴あけ加工の注意点

穴あけ加工には独自の注意点や課題があります。
特にフライス盤や旋盤を使用した場合、以下のようなポイントに注意が必要です。

ドリルの折損

硬い材料を加工する際や、深い穴をあける際にはドリルが折れるリスクがあります。
そのため、適切な切削条件の選択や、ドリルの冷却・潤滑が重要です。

適切な条件

材料の硬さや熱伝導性、加工速度や送り速度など、多くの要素が穴あけ加工の品質に影響を与えます。
適切な切削条件を選択することが、効率的な加工と高品質な製品の両立に必要です。

図面チェック

加工前には図面をよく確認し、加工位置や穴の大きさ、深さ等が正確であることを確認することが重要です。

チップの除去

ドリルで穴あけ加工を行うと、切削部からチップが発生します。
これらのチップが穴内に残ると、穴の精度を低下させたり、次の工程で問題を引き起こしたりする可能性があります。
したがって、適切なチップ除去方法の選択と実施が重要です。

安全対策

どんな加工においても安全は最優先です。
機械を適切に操作し、安全装置を確認したり、保護具を装着したりするなどの対策を怠らないようにすることが、何よりも重要となります。

まとめ

穴あけ加工は、製造業において最も基本的な加工方法のひとつです。
その単純さに反して、背後には多くの知識と技術が求められます。
それらを理解し、適切に適用することで、効率的で高品質な穴あけ加工を実現することが可能です。
また、穴あけ加工の効率と品質は、製品全体の品質や生産効率にも大きな影響を与えます。
穴あけ加工の知識と技術は、製造業全体の生産性向上に非常に重要と言えるでしょう。

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