内面研磨とは?研削盤種類や加工方法・加工不良の原因と対策や砥石について解説!
内面研磨・研削と聞いても、加工の際に
「必要な機械はどのようなものなのか」
「加工方法はどのような工程なのか」
とお悩みの方は多いのではないでしょうか。
また、平面研削や円筒研削の作業は実施しているけれど
「内面研磨・研削は未実施で今後パイプなどの内径加工の導入を考えている」
という方もいるのではないでしょうか。
この記事は、そんな製造業者向けの記事になっています。
加えて、内面研磨・研削を実施している方向けに特徴や種類、不良対策のポイントなども紹介しているので、役立つ内容になっていると思います。
目次
内面研磨・研削は砥石で削って磨くこと
回転する砥石によって円筒素材の内側を削る加工です。
研磨加工の中には、「研削」と「琢磨」の意味が含まれています。
一般的には削り落とすことを研削加工といい、仕上げ工程として磨くことを研磨加工と表現することが多いです。
内面研磨・研削加工をするには、内面研削盤を用います。
内面研磨・研削では、切削加工で用いる刃物の部分に該当するのが砥石です。
砥石は、砥粒を結合剤で固めている物で、材質は、酸化アルミや炭化ケイ素など硬い砥粒を結合剤で固めて作られます。砥石の材質は非常に硬く、難加工材も削ることが可能です。
砥石は自主作用があるので、刃のように研ぐ必要なく、長時間加工ができます。
寸法精度が良いので、切削加工後や焼入れを施したあとの仕上げ加工に用いられることが多いです。
内面研削盤4つの種類
内面研磨・研削をするには内面研削盤が必要です。
旋盤のような構造になっていて、回転する素材に砥石をあて研磨・研削します。
ここでは4つの種類の内面研削盤について、詳細を記述しました。
- 普通形
- プラネタリ形
- センタレス形
- シュー形
普通形
砥石を素材の中に入れて、素材を回転させて内径を研削・研磨していく形です。
テーパ加工にも対応可能で、加工精度が良いという特徴があります。
プラネタリ形
加工軸に遊星運動を与えて、内面を研磨・研削する形です。
素材を固定しているので、大きな製品や複雑な内径を加工する際に用いられます。
センタレス形
素材をチャックに固定せず、素材を各種ロールで支えて内面研磨・研削する形です。
加工部分が全長に沿って指示される仕組みの為、内径を均一に研磨・研削することを得意とします。
精度を一定に保つことが可能で、量産向きです。
シュー形
センタレス形の一種で、素材の外形をシューという軸で2点支える形です。
内面研削3つの加工種類
内面研削の加工種類は3種類あります。
- テーパ加工
- 段付き加工
- 中ぐり加工
ここではそれぞれの詳細を記述しました。
テーパ加工
少し角度をつけた内面研削加工です。
素材をチャックに角度を付けて取り付ける加工方法で、普通形での研削作業になります。
段付き加工
直線の穴に段を付ける加工です。
段付き加工では砥石先の摩耗が多く、砥石の修正に時間がかかり加工時間が長くなる特徴があります。
なお、内径奥に研削逃げを設計することで砥石摩耗を減少させることが可能です。
問題なければ研削逃げを多めに設計すると、砥石摩耗のリスクが減ります。
中ぐり加工
元々ある穴を広げる加工です。
研削による加工なので、切削より時間がかかりますが、精度は高くキレイに仕上がります。
内面研削の加工の注意点
ここでは内面研削の加工を行う際の注意点として、代表的な加工不良、また原因と対策を記載しています。
なお、これらはあくまでも一部となりますので、あくまでも参考程度としていただければと思います。
名称 | 原因 | 対策 |
真円度不良 | ・素材の取り付け不良 ・ドレッシング不良 |
・チャックを調整する。 ・鋭いドレッサでドレスする。 |
円筒度不良 | ・選択砥石の不適当 | ・クイルの剛性を高める又はクイルの材質を変更。 ・砥粒脱落の場合は硬い結合度の砥石に変更。 |
円筒度不良 | ・研削作業の不適当 | ・砥石の両端を素材より幅を大きくする。 ・砥石台のテーブル送りを調整する。 |
焼け われ | ・研削条件 | ・砥石の周速度を変更する。 ・砥石を変更する。 ・切り込み量を変更する。 |
内面研磨・研削で使用する砥石について
内面研磨・研削の加工する為には砥石が不可欠です。
なお、条件によって砥石を調整する必要があります。
ここでは、そんな砥石について、構造や種類、また注意点などについて記載しています。
砥石の構造
砥石は3つの要素からできています。
- 砥粒
- 結合剤
- 気孔
砥粒が刃物に相当し、摩耗した砥粒は自然と脱落して、新しい砥粒が表面にでてきます。
結合剤は砥粒を結合し、性能を調整する役割を持ちます。
また気孔は、切りくずを排出して目詰まりを防いだり、砥石の発熱を抑えたりする役割を持ちます。
砥粒の種類
▼アルミナ系
名称 | 記号 | 色 | 用途 |
褐色アルミナ | A | 褐色 | 一般鋼材・自由研削 |
解砕形アルミナ | HA | 灰白色 | WAとほぼ同じ、仕上げが難しい材料向け |
淡紅色アルミナ | PA | 淡紅色 | WAとほぼ同じ精密軽研削向き |
白色アルミナ | WA | 白色 | 合金鋼・工具鋼・焼き入れ鋼 |
アルミナジルコニア | AZ | ねずみ色 | 重研削 |
▼炭化ケイ素系
名称 | 記号 | 色 | 用途 |
黒色炭化ケイ素 | C | 黒色 | ステンレス・アルミ・銅・真鍮・普通鋳鉄 |
緑色炭化ケイ素 | GC | 緑色 | 超硬合金・ハイス・ガラス・高硬度材料 |
▼超砥粒
名称 | 材質 | 用途 |
ダイヤモンド | ダイヤモンド | サファイヤ・炭化ケイ素・高硬度な非鉄系難削材 等 |
CBN | CBN | 耐熱鋼・焼き入れ合金鋼・高硬度ベアリング鋼 等 |
超砥粒はJIS規定により記載されているのは上記の2種類のみです。
メーカーによって細分記号を加えて表示して良いと規定があるので、メーカーにより記号が異なります。
ダイヤモンドは耐熱性が低いため、高温になりやすい素材はCBNが良いでしょう。
粒度
粒度とは、砥粒の大きさを表します。
数値としては220までを粗粒、それ以上を微粒と言い、数値が小さいほど粗く、大きいほど細かいです。
粒度が大きいと強度は弱くなります。
結合度
結合度は、砥粒と結合剤の保持力を表すものです。
アルファベットのA~Zで表します。
Aに近いほど柔らかいです。
硬い加工物には軟らか目の砥石を、軟らかいものには硬めを用います。
結合度の大きい砥石ほど強度が強く、軟らかいものほど強度は弱いです。
砥石トラブル
砥石にトラブルが起きると焼けやわれなどの加工不良が発生してしまいます。
砥石トラブルの詳細を記載します。
目詰まり
砥粒と砥粒の間に削りカスが詰まり固着することで発生します。
柔らかい素材を研削すると目詰まりが発生しやすいです。
目詰まりが発生すると砥石の自主作用ができなくなるので、効率が大幅に落ちます。
熱がこもりやすくなり、素材に「焼け」や「びびり」が発生し、加工精度の低下が著しいです。
素材にあった砥石を選択しましょう。
目つぶれ
砥粒の刃の部分だけが削られてしまって、砥石が平坦になってしまい砥粒が脱落しないままの状態です。
砥石の自主作用が働かなくなってしまったため、効率が大幅に下がります。
熱が増大し、「焼け」や「びびり」が発生してしまいます。
自主作用が働くように研削負荷を調整しましょう。
目こぼれ
砥粒が自主作用ではなく落ちてしまう現象です。
砥粒同士をつなぎとめている結合剤が柔らかい場合に発生します。
目こぼれがおきると砥石の切れ味が大きく低下し、砥石の寿命も短くなります。
目こぼれを防止する為には結合剤の柔らかさや切削負荷を調整しましょう。
内面研磨・研削の加工条件について
内面研磨・研削において、加工不良を発生させないための重要な条件4つの詳細を記載します。
周速度
研磨・研削する際の砥石の動きを表す単位が周速度です。
回転数で表すと素材の径により異なってしまうので、周速度で表します。
砥石によって周速度の限界が設定されていて、範囲内の設定で研磨・研削をしなければ効率的に作業ができません。
周速度の求め方は
周速度(m/s) = 砥石の外径(mm) × 3.14 × 回転数(rpm)÷1000÷60
砥石によって最高使用周速度があるので注意しましょう。
切り込み量
研磨・研削する素材への切り込み量は加工条件の重要なひとつです。
切り込み量が不足してしまうと「焼け」が発生してしまいます。
砥粒が素材へ十分に食い込んでおらず、表面で滑ってしまい、熱ダメージが増大することが原因です。
熱ダメージにより砥粒が摩耗し、そして平坦化し目つぶれが発生します。
反対に、切り込み量が多すぎると、砥石寿命が低下します。
砥粒が深く食い込みすぎて回転のたびに砥粒が必要以上にこぼれてしまい、目こぼれが発生し、砥石の寿命低下を引き起こします。
送り速度
送り速度が遅すぎると、「焼け」を発生してしまいます。
送り速度が遅すぎることで素材の表面をすべってしまい熱を持ちます。
熱を持ち砥粒が摩耗し平坦化し素材に焼けが発生します。
反対に、送り速度が速すぎると砥石に機械的な負荷がかかり、砥粒の脱落で砥石寿命の低下を引き起こします。
速すぎると目こぼれや粉砕などが砥石に起こり砥石の寿命が著しく低下します。
研削液
内面研磨・研削では、水溶性また不水溶性どちらでも使用可能です。
加工条件など問題なければ、引火などのリスクがない水溶性で良いでしょう。
まとめ|部品製作のことならJig Match
この記事では内面研磨・研削について記載してきました。
内面研磨・研削とは、円筒状の内径を研磨または研削する加工のことです。
砥石を用いるので、長時間作業が可能ですが、切削に比べると時間がかかります。
テーパ加工や段付き加工も可能で、内面研削盤は万能な働きができます。
砥石を用いて加工するので、砥石の条件などが重要になります。
作業不良などが起きたら、砥石の条件を見直すといいでしょう。
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