焼き入れとは?種類ごとの特徴や方法・他の熱処理技術について解説
自動車や工作機械などに使われる部品には強度が求められます。
そこで用いられるのが熱処理技術です。
この記事では、そんな熱処理技術の基本とも言える焼き入れについて紹介します。
目次
焼き入れとは
焼き入れは、特に鋼のような金属の硬度と耐久性を向上させるための熱処理技術です。
このプロセスは、金属をある温度まで加熱し、急激に冷却することで行われます。
これにより金属の組織構造を変化させ、主に炭素量の変化によって、物理的性質も変化させることができ、強度を向上させることができるのです。
ちなみに、金属の組織構造が変わる温度は、変態温度や変態点と呼ばれます。
焼き入れの必要性
工業製品において、特に耐摩耗性や耐疲労性が求められる部品に対して、焼き入れは重要な役割を果たします。
例えば、ギアやベアリング、工具などがこれに該当します。
焼き入れによって、これらの部品はより長い耐用年数を持ち、より過酷な条件下での使用に耐えることができます。
・硬度の向上
・耐久性の向上
・耐摩耗性の向上
・耐疲労性の向上
・耐食性の向上
水焼き入れと油焼き入れの違い
金属を加熱して冷却する焼き入れですが、冷却する際、水を使用する方法と油を使用する方法があります。
- 水を使う水焼き入れ
- 油を使う油焼き入れ
水を使用する水焼き入れでは、急激な冷却が行われます。
これは金属を非常に硬くしますが、同時に脆さを増加させる可能性があります。
一方、油を使用する油焼き入れでは、緩やかな冷却が行われます。
これにより、金属はやや柔らかく、靭性に優れる結果となります。
これらは、部品の最終的な用途に基づいて選択されます。
焼き入れの種類
焼き入れにはさまざまな種類があり、それぞれが特定の用途や要件に適した金属の特性を生み出します。
全体焼き入れ(ズブ焼き入れ)
全体焼き入れは、部品全体を均等に加熱し、その後急激に冷却します。
これにより、部品全体が均一な硬度を持つようになります。
一般的に、大きな部品や均一な特性が求められる場合に適しています。
表面焼き入れ
表面焼き入れは、部品の表面層のみを焼き入れるプロセスです。
これにより、内部の靭性を維持しながら表面の耐摩耗性を向上させることができます。
表面の摩耗に特に耐えなければならない部品に適しています。
浸炭焼き入れ
浸炭焼き入れでは、部品を炭素を含む環境で加熱し、表面に炭素を浸透させた後に焼き入れを行います。
この方法では、表面の硬度を非常に高くしつつ、内部は靭性を保ちます。
真空焼き入れ
真空焼き入れでは、真空状態での加熱と冷却を行います。
これにより、酸化や腐食を防ぎながら、金属の均一な硬化を実現できます。
特に高品質な部品や、特殊な用途に用いられる部品に適しています。
高周波焼き入れ
高周波焼き入れでは、高周波電流を使用して金属の特定部分を局所的に加熱し、その後急速に冷却します。
これにより、必要な部分のみを焼き入れることができます。
複雑な形状の部品や、特定の部分のみを強化する必要がある場合に適しています。
窒化焼き入れ
窒化焼き入れは、窒素を含む環境で加熱することにより、金属表面に窒素化合物を形成し、硬化させる方法です。
この処理は、表面の耐摩耗性を向上させ、腐食に対する耐性を高めます。
焼き入れ以外の熱処理
熱処理技術には、焼き入れ以外にも焼き戻し、焼きなまし、焼きならしといった種類があります。
焼き戻し(テンパリング)
焼き戻しは、焼き入れされた金属を再度加熱し、ゆっくり冷却することで硬さを落とし、靭性を高める方法です。
焼き入れ後、硬度は高いのですが、脆さがあります。
この脆さを減少させる目的で行われるのが焼き戻しで、基本的に焼き入れとセットで行われます。
焼きなまし(アニーリング)
焼きなましは、焼き入れされた金属をそのまま保持し、ゆっくりと時間をかけて冷却する方法です。
焼鈍(しょうどん)とも呼ばれます。
焼き戻しほどの硬さを求めず、後に加工しやすいよう、柔らかくすることを目的に行われます。
焼きならし(ノーマライジング)
焼きならしは、焼き入れされた金属を空気中で冷却する方法です。
鋳造や鍛造の後は、内部に歪が発生しており、そのまま加工するうえでは強度が不十分となります。
そこで、この残留応力を取り除く目的で行われるのが、焼きならしです。
なお、熱処理技術全般については、以下の記事でまとめています。
▼熱処理技術全般に関する記事
熱処理とは?種類ごとの効果・方法と設備について解説!
まとめ
この記事では、熱処理技術の基本とも言える焼き入れについて紹介してきました。
このプロセスは、用途にあった部品を製作するため、金属の性質を最適化するうえで、非常に重要です。
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