ステンレス板金加工の方法と注意点・ステンレス板の種類と特徴も解説
ステンレスは錆びにくく、耐久性や耐熱性に優れた金属です。
そのため、工業や建築、医療や食品など、さまざまな分野で使用されています。
ステンレス板金加工とは、そんなステンレスの板を切ったり曲げたり、穴をあけたり溶接したりして、目的の形に加工することです。
この記事では、ステンレス板の種類と特徴から、ステンレス板金加工の方法と注意点について解説します。
目次
ステンレス板の種類と特徴
ステンレス板は、大きく以下の3種類に分けられ、またそれぞれ特徴も異なります。
- オーステナイト系ステンレス
- フェライト系ステンレス
- マルテンサイト系ステンレス
オーステナイト系ステンレス
最も一般的なステンレスで、18-8ステンレスやSUS304などが該当します。
クロム(Cr)とニッケル(Ni)を含み、耐食性や耐熱性に優れますが、硬度は低く磁性はありません。
しかし、熱処理によって高い硬度になります。
自動車部品や原子力発電、理化学装置などに使用されています。
フェライト系ステンレス
基本的にニッケル(Ni)は含まず、オーステナイト系よりも硬度が高く、磁性があります。
また、耐食性はやや劣りますが、耐熱性は高いです。
加えて、溶接性も悪くありません。
そのため、家庭用品において幅広く使用されています。
SUS430などが該当します。
マルテンサイト系ステンレス
最も硬度が高く、磁性があります。
しかし、クロム(Cr)の含有量が少ないため、耐食性は低いです。
強度また耐摩耗性に優れることから、ベアリングや刃物などに使用されています。
SUS420やSUS440などが該当します。
ステンレス板金加工の5つの種類と方法
ステンレス板金加工は、工程から見ると、大きく以下の5つの種類に分けられます。
- 抜き・切断加工
- 曲げ加工
- 穴あけ加工
- 溶接
- 仕上げ加工
ステンレス板の抜き・切断加工
抜き・切断加工は、ステンレス板を目的の形やサイズに切り出す加工です。
以下のような方法があります。
ステンレス板の抜き・切断加工の方法 | |
シャーリング | ステンレス板を上下の刃で挟んで切断する加工方法です。 直線的な切断に適しています。 |
プレス | ステンレス板に型を押し付けて切り抜く加工方法です。 複雑な形の切り抜きに適しています。 |
レーザー | ステンレス板にレーザー光を照射して溶かして切断する加工方法です。 高精度で細かい切断に適しています。 |
プラズマ | ステンレス板に高温のプラズマを噴射して溶かして切断する加工方法です。 厚いステンレス板の切断に適しています。 |
ウォータージェット | ステンレス板に高圧の水流を噴射して切断する加工方法です。 熱による変形や変色がなく、環境に優しいです。 |
ステンレス板の曲げ加工
曲げ加工は、ステンレス板を曲げたり折ったりして、目的の形や角度にする加工です。
プレス機械を使用することが一般的で、上下の金型でステンレス板を挟み、押し付けて加工を行います。
なお、金型の形や具体的な方法によって、さらに種類が分けられます。
ステンレス板の曲げ加工の種類と方法 | ||
型曲げ | V曲げ | ステンレス板をV字型の金型に挟んで、上下の圧力で曲げる加工方法です。 |
L曲げ | ステンレス板の端部を直角に曲げる加工方法です。 | |
U曲げ | ステンレス板をU字型の金型に挟んで、上下の圧力で曲げる加工方法です。 | |
Z曲げ | ステンレス板をZ字型に曲げる加工方法です。 V字型またL字型の金型を使用し、1工程また2工程で加工します。 |
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R曲げ | ステンレス板を円弧状に曲げる加工方法です。 U字型の金型を上に、V字型の金型を下にし、加工します。 |
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O曲げ | ステンレス板を円筒状に曲げる加工方法です。 複数の工程を経て加工します。 |
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ヘミング曲げ | ステンレス板の端部を180°折り返して、二重にする加工方法です。 | |
押さえ巻き曲げ | ステンレス板の縁を押さえながら、L曲げをする加工方法です。 | |
成形加工 | フランジ成形 | ステンレス板の端部を直角に曲げて、突き出しする加工方法です。 |
バーリング加工 | ステンレス板に縁の付いた穴を作る加工方法です。 | |
カーリング加工 | ステンレス板の端部を円筒状に巻き込む加工方法です。 | |
送り曲げ | ロール曲げ | ステンレス板をローラーで圧力をかけながら、連続的に曲面状に曲げる加工方法です。 |
ステンレス板の穴あけ加工
穴あけ加工は、ステンレス板に穴をあける加工です。
以下のような方法があります。
ステンレス板の穴あけ加工の方法 | |
ドリル | ステンレス板に刃の付いたドリルで穴をあける加工方法です。 らせん状の溝のあるツイストドリルがよく使用されますが、穴の形やサイズによっていくつかの種類があります。 |
ボール盤 | ステンレス板にドリルを取り付けたボール盤で穴をあける加工方法です。 ステンレス板をテーブルに置き、回転するチャックに固定したドリルをハンドルで上下に手動操作して加工します。 |
レーザー | ステンレス板にレーザー光を照射して溶かして穴をあける加工方法です。 高精度で細かい穴あけに適しています。 |
パンチ | ステンレス板を上下の金型で挟んで打ち抜くことで穴をあける加工方法です。 タレパンを使用することで自由な形に加えて連続的に穴をあけることができます。 |
ステンレス板の溶接
溶接は、ステンレス板同士を溶かして接合する加工です。
以下のような方法があります。
ステンレス板の溶接の方法 | |
MIG溶接 | シールドガスに不活性ガスを使用して、溶接部の酸化を防ぐ方法です。 電極には針金状のワイヤーを使用して、これとステンレス板を溶かして接合します。 溶接速度が速い特徴を持ちます。 |
TIG溶接 | シールドガスに不活性ガスを使用して、溶接部の酸化を防ぐ方法です。 電極にタングステンを使用して、ステンレス板を溶かして接合します。 高精度で仕上がりがよい特徴を持ちます。 |
被覆アーク溶接 | 電極に同じステンレス棒を使用して、被覆材を塗布したものを電極とする方法です。 この電極がガスやスラグを発生させてシールドの役割を果たします。 手作業で行える利便性が特徴です。 |
サブマージアーク溶接 | 接合部に被覆材を塗布して、電極となるワイヤーを供給して、自動で溶接する方法です。 自動で溶接を行えることが特徴です。 |
抵抗溶接 | ステンレス板同士に圧力をかけて、電気を通すことで発生した抵抗熱で、ステンレス板を溶かして接合する方法です。 強度が強く溶接速度が速い特徴を持ちます。 |
レーザー溶接 | レーザー光を溶接部に照射して、ステンレス板を局所的に溶かして接合する方法です。 熱の影響が小さい特徴を持ちます。 |
ステンレス板の仕上げ加工
仕上げ加工は、ステンレス板の表面をなめらかにしたり美しくしたり、整える加工です。
以下のような方法があります。
ステンレス板の仕上げ加工の方法 | |
バフ研磨 | 布や綿、ウールなどを重ねて作った円盤状のバフと呼ばれる工具に、研磨剤を塗布して、これを高速回転させてステンレス板の表面を研磨する加工方法です。 高い光沢を出せるため、製品の外観をよくすることができます。 |
電解研磨 | 電気分解を利用して、ステンレス板の表面を溶かして研磨する加工方法です。 光沢を出せることに加えて、耐食性を高めることができます。 |
ヘアライン加工 | 単一方向への研磨により、名前の通り髪の毛程度の細さの傷跡を付ける加工方法です。 光沢をなくしマットな質感にすることができます。 装飾品などにも使用されます。 |
上記以外に仕上げ加工としては、グラインダを使用した研磨や、溶接によってできた焼けを除去するため、強酸に漬け込む酸洗いなどもあげられます。
また表面処理として、メッキや塗装はもちろん、腐食作用を利用した化学処理により溶解して模様を付けるエッチング加工や、凹凸の模様を付けるエンボス加工など、種類はさまざまです。
ステンレス板金加工を行うときの注意点
ステンレス板金加工を行ううえでは、以下のようにさまざまな注意点があります。
ステンレス板の種類ごとに特徴が異なる
ステンレス板はオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系と種類が分けられます。
さらに、それぞれの中でもSUS304、SUS430、SUS420といったように、種類は細分化されます。
そしてこれらの種類は、それぞれ硬度や耐食性、耐熱性や磁性、溶接性など、持つ特徴が異なります。
そのため、それぞれに合った方法で加工を行う必要があり、またこれには知識や経験が必要です。
熱伝導率が低い
ステンレスは、もともと熱伝導率が低い特徴を持ちます。
そのため、切断加工や穴あけ加工を行うとき、生じる熱がステンレス板や工具にこもりやすいです。
これは、ステンレス板の焼けや工具の摩耗また損傷などの問題を引き起こす可能性があります。
ステンレス板金加工を行うときは、上記のことに注意が必要です。
加工硬化する
ステンレスは、熱伝導率が低いことに加えて、加工硬化しやすい特徴も持ちます。
これは、一定の力を加えると、ステンレスが硬くなる現象のことです。
なお、ステンレス板金加工においては、この加工硬化により工具の摩耗また損傷などの問題を引き起こす可能性があります。
また、これにより加工効率も悪くなります。
そのため、使用する工具や加工するときの条件などに、気を付けなければいけません。
スプリングバックが大きい
ステンレス板金加工では、スプリングバックにも注意しなければいけません。
スプリングバックとは、曲げ加工などを行うとき、弾性と呼ばれる性質により、元に戻ろうとする現象のことです。
ステンレス板においては、他の金属と比較してもスプリングバックが大きいです。
そのため、ステンレス板金加工においては、このスプリングバックを考慮したうえで行う必要があります。
まとめ|部品製作のことならJig Matchへ
この記事では、ステンレス板金加工についての基本的な情報をまとめました。
ステンレス板金加工を依頼される方、ステンレス板金加工を行っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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