熱処理の焼き戻しとは?種類や加工方法・注意点を解説
熱処理の焼き戻しは、焼き入れ後に行われる、金属をより強化する加工です。
この記事では、そんな焼き戻しの基礎知識を解説します。
なお、焼き入れや焼きなまし、焼きならしといった熱処理全般については以下の記事で解説しています。
▼熱処理全般について解説している記事
熱処理とは?種類ごとの効果・方法と設備について解説!
目次
焼き戻しとは
焼き戻しとは、金属、主に鋼材において、靭性を向上させたり、内部の組織を安定させたりするために行う、熱処理のひとつです。
一般的に焼き入れとセットで行われます。
焼き入れ後、鋼材は硬くなりますが、その分もろくなってしまいます。
また、内部の組織が不安定となり、硬さにムラのある状態にもなってしまいます。
これらの問題を解消するために行うのが、焼き戻しとなります。
焼き入れ後に、再度加熱する方法で行います。
焼き戻しの2つの目的
焼き戻しの目的は大きく以下の2つになります。
- 靭性の向上
- 組織の安定
まず焼き戻しの目的としては、靭性の向上があげられます。
鋼材は、焼き入れを行うことでマルテンサイトと呼ばれる組織になり硬くなりますが、この状態は割れなどが生じやすいです。
そこで必要になるのがある程度の柔らかさで、焼き戻しではそんな粘り強さを出すことができます。
また、焼き入れを行うと熱によって、また組織が変わることによって、内部応力が生じます。
外力により伸びるときに発生するのが引張応力、外力によって縮むときに発生するのが圧縮応力と言います。
加えて、焼き入れにおける冷却時にオーステナイトが内部に残り不安定な組織になっている場合もあります。
これらは、形状や寸法が変わったり、後の加工時に割れなどが生じたりする場合もありますが、焼き戻しを行うことで内部応力を除去、また組織を安定させることができます。
焼き戻しの2つ種類の方法と用途例
焼き戻しは、高温と低温で行う、2種類があります。
- 低温焼き戻し
- 高温焼き戻し
それぞれの概要と方法を以下で解説します。
低温焼き戻し
低温焼き戻しは、低い温度(約150~200度)で鋼材を1時間加熱し、空気中で冷却します。
硬さをある程度維持しながら靭性を向上し、組織を安定させます。
また、経年劣化や割れの防止、耐摩耗性の向上も期待できます。
ナイフ
包丁
など
高温焼き戻し
高温焼き戻しは、高い温度(約500~650度)で鋼材を1時間加熱し、空気中で急冷します。
なお、急冷することで焼き入れ後に残っていたオーステナイトがマルテンサイトになるため、再度焼き戻しを繰り返します。
硬さよりも靭性の向上を求めた焼き戻しの種類になります。
シャフト
バネ
高級刃物
など
焼き戻しの注意点
焼き戻しを行ううえでは、焼き戻し脆性と言われる注意点があります。
これは、焼き戻しを行うことで、かえって機械的性質(金属材料が持つ力学的な特性のこと)を下げてしまうことを指します。
なお、低温焼き戻しと高温焼き戻しの種類ごとにあるため、以下でそれぞれ解説します。
低温焼き戻し脆性
低温焼き戻しにおいては、約300~400度で行った場合、鋼材が軟化する恐れがあります。
そのため、温度をしっかりと調整したうえで行うことが重要です。
また、低温焼き戻しは加熱後ゆっくりと冷却することが望ましいとされています。
急冷をした場合、割れなどが生じる恐れもあります。
高温焼き戻し脆性
高温焼き戻しにおいては、鋼材が約300~400度で軟化することからもわかるように、ゆっくりと冷却した場合、機械的性質を下げてしまう恐れがあります。
まとめ
以上、熱処理の焼き戻しについて解説しました。
この記事のポイントは以下の通りです。
- 焼き入れとセットで行われる
- 鋼材の靭性を向上させて粘り強さを出す
- 鋼材の内部応力を除去して組織を安定させる
- 低温焼き戻しと高温焼き戻しの2種類がある
- 温度を誤るとかえって機械的性質を下げる
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