チタンの加工が難しい4つの理由&加工方法と加工時の3つのポイント
「チタンは加工が難しいといわれるけど、実際どうして難しいといわれるのか?」
「チタンの特徴や加工のポイントとはいったい何?」
チタンの加工は難しいといわれていますが、なぜ難しいといわれているのかしっかりと理解していない人もいるでしょう。
しかし、難しい理由を理解していないと不良を出してしまったり、工具を傷つけてしまったりする可能性があります。
そこでこの記事では、チタンの加工がなぜ難しいのか、どのようなことに気をつければよいのかを解説します。
また、チタンの特徴や使用するメリットといった、材質の基本情報も解説します。
目次
4種類のチタンの加工方法
チタンは軽量で強度も強く、錆びないなど優れた特性を持っています。
しかし、この優れた特性ゆえ加工がしにくい面があり、特に工具の消耗率は大きな悩みとしてあげられます。
そのため、最良の加工をするには適した加工方法や加工時の注意点を理解する必要があります。
まずここでは、チタンの加工方法について解説します。
チタンの加工方法は主に以下の4種類です。
- 切断加工
- 曲げ加工
- 溶接加工
- 切削加工
切断加工
切断加工の方法には主に以下の3種類があります。
- レーザー加工
- シャーリング加工
- ワイヤーカット加工
特徴を以下の表の通りです。
レーザー加工 | シャーリング加工 | ワイヤーカット加工 | |
加工方法 | レーザーを照射して溶かして切断する。 | 刃で切断する。 | 電圧をかけ、熱を利用して材料を溶かして切断する。 |
加工の特徴 | 加熱範囲が小さいため、変形が抑えられ、バリ不良が少ない。 また、形状対応が広い。 |
切断速度が速い。 大量の加工に向いている。 |
高精度かつ、大量加工に向いている。 |
曲げ加工
曲げ加工の方法は、主にプレス加工とベンダー曲げがあります。
チタンは弾性が強い特徴があり、スプリングバックを起こしやすいです。
スプリングバックとは、材料を曲げても元に戻ろうとする現象です。
そのため、曲げ加工をおこなう際は、材料に合わせて角度や圧力など、かなり細かい調整が必要とされます。
加工技術が求められるため、トライアンドエラーをくり返しながら技術を磨いていく必要があります。
溶接加工
チタンを溶接加工する際、加工部分が空気に触れると反応し、脆化現象が起こるため加工が難しいとされています。
そのため、溶接方法はティグ溶接(TIG)がよく利用され、シールドガスに包まれることで空気に触れさせず、脆化や酸化を防ぎながらおこないます。
他にも、レーザー溶接やプラズマ溶接、MIG溶接や電子ビーム溶接などがあります。
切削加工
チタンを切削加工する機械加工の方法としては、主にフライス盤やマシニングセンタ、ドリル加工があります。
なお、後述でも解説しますが、硬度が高い、また熱伝導が低いといったチタンの特徴が原因で、工具の消耗は激しくなるため、注意が必要となります。
チタン加工が難しい4つの理由
すでに再三触れていますが、チタンは優れた特性を持つゆえに加工が難しいといわれています。
その主な理由は、以下の4点です。
- 金属硬度が高い
- 熱伝導が低い
- 活性化しやすい
- ヤング率が低い
それぞれの理由を確認し、加工時の参考にしてみてください。
金属硬度が高い
チタンは硬度が高い金属であり、切削抵抗が高いです。
そのため、切削温度が工具に伝わる割合が高く、加工しにくいとされています。
熱伝導が低い
熱伝導が低いと、切削加工する際に熱が逃げてくれないため、工具と材料に集中的に熱が蓄積します。
そのため摩擦が大きくなり、工具の消耗が早く、劣化の原因となります。
活性化しやすい
チタンは化学的な活性が強く、合金の生成や融着の原因になりやすいとされています。
ヤング率が低い
ヤング率が低いと、切削加工した際に材料が大きく変形しやすくなります。
特に厚みの薄いチタンを加工をする際は、精度が低下してしまうため注意が必要となります。
チタン加工の3つのポイント
チタンの加工は難しいとされていますが、ポイントを押さえることで、ある程度工具の消耗を抑えたり不良を減らしたりすることができます。
そんな主なポイントが、以下の3点です。
- 切削油を使う
- 切削速度を落とす
- チタン加工に適した道具を使う
切削油を使う
切削油は切削温度と切削抵抗を低くする役割があります。
高速度で切削加工する際は冷却効果を高める水溶性切削油剤を使用し、低速度で切削加工する際は不水溶性切削油剤を使用し、工具先端の摩擦低減や焼き付きを防止します。
切削速度を落とす
工具の摩耗を抑えるためには、切削温度を低く保つ必要があります。
そのため、切削速度を抑えることで消耗も抑えることができます。
チタン加工に適した工具を使用する
チタン加工をする際は超硬合金工具を使用しますが、摩耗を抑えるためにチタンカーバイトを含まない種類が望ましいです。
切削をする際は通常の場合、超硬合金K10や超硬合金K20が適しています。
耐摩耗性や耐欠損性に優れた工具を選択することがポイントです。
チタンの5つの特徴
チタンの特徴についても解説します。
加工において役立つ情報なので、ぜひ参考にしてみてください。
ここでは、5つのチタンの特徴を解説します。
- 重量が軽い
- 比強度が高い
- 耐食性が高い
- 人体に優しい
- 熱伝導率が低い
重量が軽い
チタンは金属の中でも軽い金属です。
質量を鉄と比べると約2/3、銅と比べると約1/2です。
なお、アルミと比べると重いものの、強度や耐食性はチタンの方が上回っています。
比強度が高い
チタンの強度は重さあたりでいうと、鉄の約2倍、アルミの約3倍にもなります。
しなりやすく弾性が強い特性もあるため、少しの変形であれば元の形状に戻ろうとします。
強度が強く、さらに材料を薄くできるため、軽量化を求めたい場合に最良といえます。
耐食性が高い
チタンは錆びにくい特徴も持っており、これはプラチナと並ぶほどです。
耐水性が高いことから、船や海洋建造物の材料としても使用されています。
人体に優しい
チタンはイオン化しにくい特性があります。
そのため、イオンが溶出する恐れが極めて少なく、金属アレルギーが起こりにくいのです。
また、毒性もなく人体に優しい金属でもあります。
これらのことにより、人体に埋め込む固定器具や医療用の道具などにも使用されています。
熱伝導率が低い
チタンの溶融温度は約1,660℃であり、他の金属と比べると熱に対して高い耐性を備えています。
そのため、ロケットの部材である熱に強い製品を製作する際などにも使用されています。
チタンを使用する3つのメリット
ここまでチタンについて解説してきましたが、使用する際のメリットが見えてきたのではないでしょうか。
ここでは、改めてチタンを使用する際のメリットについて解説します。
チタンを使用するメリットとしてあげられるのは、以下の3つです。
- 軽量化に適している
- 腐食に強い
- 人体にも触れる製品にも使用できる
重複する部分もありますが、これらのメリットについて詳しく解説していきます。
軽量化に適している
チタンは他の金属と比べても重量が軽いです。
そのため運搬がしやすく、輸送コストを下げる工夫もできます。
金属の強度を求めながら大型の製品を製作するとなると、通常は重量が重くなってしまいます。
しかし、チタンの軽さと強度の特性を活かすことで、軽量化を叶えることができるのです。
腐食に強い
金属は通常、空気中で酸化する素材がほとんどです。
そのため錆び問題や腐食問題が発生するのですが、チタンは空気中の酸素と反応し、表面に酸化膜が形成されるため、それ以上酸化が進むことがありません。
これは酸化チタンの皮膜ともいわれ、とても強固であることから、海水中での腐食や海辺近くの塩害からも守られます。
人体にも触れる製品にも使用できる
チタンは毒性がないため、人体に接触するアクセサリーや医療機器などに使用することができます。
チタンが酸素と反応して、表面に生成される酸化チタンは抗菌性が高いことから、食器にも使用されるほど人体に優しい金属なのです。
まとめ
この記事ではチタン加工について解説しました。
チタンの加工は難しいといわれていますが、それは優れた金属であるがゆえだと理解できたのではないでしょうか。
加工のしにくさはありますが、使用するメリットが非常に大きいです。
特性をしっかり理解しておくと、最良の活かし方ができるので、ぜひこの記事を参考にしてください。