板金加工とは?特徴や種類・加工工程やプレス加工との違いなどを解説

  • 投稿日:2023年3月9日(木曜日)
板金加工とは?特徴や種類・加工工程やプレス加工との違いなどを解説

板金加工は、金属板を加工する方法のひとつです。
車のボディーや建造物の外壁など、身近なところで広く用いられており、製造業には欠かせません。
この記事ではそんな板金加工の、種類や加工工程などについて詳しく解説しています。

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板金加工とは

板金加工とは、金属板を加工する方法のひとつです。
金属板を、切断、曲げ、溶接などの工程を経ることで、製品に加工していきます。

板金加工に用いる材料の材質と厚みは決まっており、主に鉄、ステンレス、アルミ、銅です。
また、銅以外は厚さが6mmまで、銅は2mmまでとなっています。

薄い金属板に切断、曲げ、溶接などの加工をする方法を総称として板金加工と呼び、プレス加工と似ている部分が多いです。

なお、金属加工全般については以下の記事にまとめましたので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。

▼金属加工全般についての解説記事
金属加工とは?加工の種類や方法・選び方のポイントを紹介!

弾性変形と塑性変形について

板金加工は、弾性変形と塑性変形という金属の性質が大きく関係しています。
簡単に言うと、弾性変形は力を加えて金属を変形させた際にもとに戻ろうとする力で、塑性変形とは金属を一定のポイントまで力を加えて変形させるともとに戻らなくなる力のことです。

弾性変形とは

金属に外部の力が加わると、原子や結晶構造の配置が変わり、ひずみを生みながら変形します。
しかし、加えられた力が取り除かれるともとの形状に戻ります。
これを弾性変形と言います。

塑性変形とは

金属に外部の力が加わると、原子や結晶構造が移動また滑走して、変形します。
そして一定のポイント(降伏点)を超えると、もとの形状に戻らなくなります。
これを塑性変形と言います。

板金加工はこの塑性変形が利用されて行われます。
なお、それ以上に外部の力が加わると、金属は耐え切れず破断してしまいます。
そのため、板金加工ではこの調整を行える技術が必要となります。

▼塑性加工についての解説記事
塑性加工とは?メリット・デメリットと種類を解説

板金加工の種類

板金加工には大きく2種類あります。
手作業で加工する手加工板金と、機械を用いて加工する機械板金です。

手加工板金は職人が板金を手作業で加工することで作られます。
職人の技術に依存するため、製造量が少ない場合に最適です。
ただし、コストが高くなる傾向があります。

一方、機械板金は、プレス機やレーザー切断機などの機械を使用する加工方法です。
機械の使用により、精度が高く、大量生産に向いていますが、投資が大きくなります。

どちらの加工方法にもメリットとデメリットがあり、用途やニーズに合わせて最適な方法を選択することが重要です。

手加工板金

手加工板金は手作業で板金加工をする方法です。
機械では難しい繊細な作業をする際に用います。

大量生産には向いておらず、受注生産のような製品に向いており、作業者の技量に直結する加工方法です。
そのため、特殊な形状で数少ない製品を製作する場合に適しています。

曲げ加工では汎用機械を用いますが、オートメーションではなく、マニュアルにて作業者の経験で調整していきます。
切断はハサミで行うことが多く、機械板金に比べると板厚は薄いです。

ちなみに、この手加工板金は以下のようにさらに分類することができます。

建築板金
ビルの外壁や建物の屋根、また雨どいやダクトといった、建築現場で使われる製品が該当します。
一般的に建築板金工事と呼ばれる、取り付けまで一貫して行われます。
自動車板金
車の傷やへこみを修理する際、もとの形に戻す作業が該当します。
打ち出し板金
雪平鍋などのように、ハンマーで叩いて製品を加工する方法が該当します。

機械板金

機械を用いて板金加工する方法です。

汎用金型を使用し、プレス機で抜きや曲げ加工をします。
レーザー加工機で切断加工をする場合もあります。

汎用金型を使用するので、費用が安価で手加工に比べると大量生産向きです。
複雑な形状には対応が難しいというデメリットがあります。

なお、製造業において主に用いられるのが、この機械板金です。
ちなみに、主に工場内で行われることから工場板金とも呼ばれます。

板金加工の工程

板金加工の工程は、大きく7つです。
工程別に加工方法やポイントを解説します。

図面設計

設計時点からコストや加工のしやすさなどを考慮すると効率が良くなります。
設計者の意図が加工者に伝わるような設計が良いでしょう。
図面は第三角法で書かれていることが多いので、展開図をイメージし、適切な加工工程を作成することがポイントです。

ブランク加工

ブランク加工とは、展開図の状態にする加工方法です。金属板をせん断や抜き加工します。
せん断加工には主にシャーリングを使用し、抜き加工にはタレットパンチやレーザー加工機を使用することが多いです。
コストや生産数量を総合的に考慮し作業方法を選定します。

▼せん断加工についての解説記事
せん断加工とは?5種類の特徴と加工時の注意点|4種類のプレス機についても解説

▼タレパン加工についての解説記事
タレパン(タレットパンチプレス)加工とは?仕組みや種類・メリットデメリットなどを解説!

加工前のタッピングやバリ取り

曲げ加工を行う前に行う加工です。主にタッピングやバリ取りが該当します。
せん断加工をするとバリが発生するので、バリ取りを行います。

タッピング加工は、曲げをしてしまうと困難です。
地味な工程ですが、曲げを行ってしまうと戻せないため、重要な工程のひとつといえます。

曲げ加工

展開図面状になっている板を曲げていく加工です。
ベンダーを用いて加工することが多いですが、材質によって曲がり方が違うので調整が必要になります。
オートメーション化していますが、条件によってスプリングバックが発生するため注意が必要です。

▼曲げ加工について詳しくはこちら
板金加工の曲げ(ベンダー)加工|形状種類・注意点や対策などの基礎を解説

溶接加工

曲げ加工により成形した部品を接合する作業です。
金属の材質や厚さによって適切な溶接を行います。
板金加工に用いる溶接方法はさまざまな種類があり、仕上がりに直結する重要な作業のひとつです。
代表的な溶接方法については、以降で解説します。

仕上げ加工

溶接加工後の仕上げを行います。
接合部の肉付きを平坦にするなど、製品に近づける作業です。
サンダーやペーパーなどを使用します。
製品に傷などがある場合も仕上げ加工にて修復します。

表面処理加工

メッキや塗装などが表面処理加工です。
製品の材質や用途によって加工方法に違いがあり、装飾が目的であれば、塗装を施します。
表面処理加工のみを専門にしている業者に委託する場合が多いです。

▼表面処理加工について詳しくはこちら
表面処理の種類ごとに用途、目的、加工方法、適した材質などを紹介

板金加工の溶接種類

板金加工に用いる溶接の種類は他の作業に比べると多いです。
その中から代表的な溶接方法を解説します。

半自動溶接

アーク溶接の一種で手作業の溶接ですが、ワイヤーが自動で供給されるため、半自動溶接と呼ばれています。
両手で作業が可能なのと作業速度も速いので作業効率が良いです。
シールドガスの種類によって呼称が変わります。

TIG溶接

アーク溶接の一種で、シールドガスにアルゴンガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを用いた溶接です。
アーク熱により母材を溶かして溶接する方法や、溶加材を用いて接合する方法もあります。
不活性ガスに覆われてアークが安定しているので、スパッタ等が出にくく、仕上がりがきれいです。

レーザー溶接

高出力レーザー光を熱源にし、母材を溶かして溶接する方法です。
アーク溶接よりも小さく絞り込むことができ、局所や融点の異なる材質の接合もできます。
溶接を小さく絞りこむことで材料の歪みや焼けを抑えられますが、価格帯は高いです。

スポット溶接

2枚の母材を点で接合する溶接方法です。
上下にある電極棒で母材を挟み、電気を発生させた熱源で溶接します。
薄い板に用いられる方法で、厚い板は対応ができないことが多いです。
技量による差が出にくいので、導入しやすい溶接機といえます。

板金加工とプレス加工との違い

板金加工とプレス加工は、どちらも塑性変形を用いた加工方法となっています。
違いはありますが、定義は曖昧です。

どちらもプレス加工を用いますが、板金加工では汎用金型を使い曲げ加工のみを行います。
一方、プレス加工では、専用の金型を使い、鍋のような複雑な形状の製品を製作します。
板金加工は、手作業での工程が多く、技量の差が出やすいですが、初期費用が抑えられます。
プレス加工は、機械による自動作業が主になり、技量の差は出にくいですが、初期費用が高くなります。

まとめ

板金加工は、板厚6mmまでの金属板を加工する方法で、製造業においては主に機械板金が用いられます。
プレス加工と類似していますが、プレス加工が機械での自動作業が多く特殊な金型を使用しているのに対し、板金加工は手作業が多く汎用金型を使用する点で違いがあります。
また、曲げや溶接など板金加工には工程が多くありますが、プレス加工と比べると導入コストは低いです。

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