プレス加工とは?メリットやデメリット・加工方法・板金などとの違いを紹介!
プレス加工は、金属の板を金型に押し当て、プレス機で加圧することで成型する、金属加工において製品を大量生産するうえで欠かせない、塑性加工技術です。
この記事ではそんなプレス加工の基本から、加工方法や金型種類ごとの加工方式、板金・鍛造との違いなど、まとめてご紹介します。
なお、金属加工全般については以下の記事でご紹介していますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。
▼金属加工全般に関する記事
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目次
プレス加工とは
プレス加工は、金属の板を金型に押し当て、プレス機で加圧することで成型する、塑性加工技術です。
主にせん断や曲げといった方法で加工をして、必要に応じてこれらを組み合わせて複数のプレス工程で製品を完成させます。
なお、1回のプレス加工の時間はわずか数秒と短いうえ、プレス工程は自動化が可能です。
そのため、プレス加工は大量生産に向いています。
プレス加工は幅広く利用されており、自動車や家電、ロケットなどの部品が、製品例としてあげられます。
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プレス加工のメリット・デメリット
- 加工時間が短いため生産性が高い
- 金型を使い技術者に依存しないため製品の品質を安定させられる
- 自動化することで連続加工・大量生産が可能
- 金型の製作・プレス機の導入が必要で初期費用が高い
- 金型を使うため製品の形状が限定される
プレス加工の製品例
プレス加工は、自動車の部品に多く利用されています。
例えば、ボディやドア、ボンネットや天井などです。
1枚の長い金属の板をカットして、プレス加工で成型して、溶接するといった流れで製作されます。
また、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの本体のカバーといった部品でも、プレス加工は利用されています。
その他、身近なところではスマホやカメラの部品、電子マネーのICチップなども、プレス加工が利用されている製品のひとつです。
ちなみに、普段あまりなじみのない、ロケットの外装や医療器具などでも、プレス加工は利用されています。
プレス加工の4つの加工方法
プレス加工の方法には、主に以下の4種類があります。
- せん断加工
- 曲げ加工(ベンディング加工)
- 絞り加工
- パンチプレス加工
せん断加工
せん断加工は、金属の板を下の金型(ダイ)に固定して、上の金型(パンチ)で加圧することで、完全に切断する加工方法です。
プレス加工の中で、1番メジャーな加工方法となります。
単に切断するだけでなく、切り抜いたり外形を打ち抜いたり、穴をあけたりすることも、せん断加工に含まれます。
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曲げ加工(ベンディング加工)
曲げ加工は、金属の板をダイに乗せて、パンチで加圧することで、曲げる加工方法です。
ローラーで挟んで曲げるロール曲げや、支点を中心に90度に曲げる板折り曲げなどがあります。
仕上がりの形状は、V字やL字、U字やZ字などさまざまです。
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絞り加工
絞り加工は、金属の板をダイとパンチに挟んで加圧することで、金型に沿った容器のような形状にする加工方法です。
製品の直径が深さより大きいものは浅絞り、製品の直径が深さより小さいものは深絞りと呼ばれます。
なお、金属の板の引っ張る力によって、しわやクラックが発生することがあるため、せん断加工などと比べると難易度が高いです。
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パンチプレス加工
パンチプレス加工は、タレットと呼ばれるホルダーに金型をセットして、これを加圧することで金属の板を打ち抜いたり、穴をあけたりする加工方法です。
これはタレットパンチプレス、通称タレパンと呼ばれます。
紙に2つの穴をあける事務用品の、穴あけパンチのようなイメージです。
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金型種類ごとのプレス加工方式
プレス加工は、金型を使って行います。
なお、この金型の種類によって、以下のようにプレス加工の方式は異なります。
- 単発プレス
- 順送プレス
- トランスファプレス
単発プレス
単発プレスは、1つの工程だけを行う方式です。
そのため、使う金型も1つの工程だけに対応可能なものとなっています。
人の手でプレス機に被加工材をセットして、プレス加工が終わったら加工材を再び人の手で取り出します。
連続加工や大量生産には向いていませんが、大型の製品や多品種小ロットの製品の製作に向いている方式です。
順送プレス
順送プレスは、被加工材を工程ごとに自動で送って、加工を行う方式です。
複数工程を1回のプレス加工で行うことができ、使われる金型も複数工程に対応可能なものとなっています。
コイル状になっている被加工材を、つなげた状態でプレス機にセットすることで、自動で加工されていきます。
高速かつ、複雑な形状でも1回のプレス加工で済ませられるため、生産性に優れています。
ただし、金型が複雑になるため、初期費用が高くなります。
トランスファプレス
トランスファプレスは、単発プレスに被加工材を工程ごとに自動で搬送させる機能を持たせた方式です。
そのため、使う金型は1つの工程だけに対応可能なものですが、複数用意することになります。
1つ目の工程でプレス加工が終わったら、トランスファ機構という移動装置で被加工材を運び、2つ目の工程でプレス加工を行う、という流れです。
1つの機械と金型でプレス加工を行う順送プレスほどではありませんが、人の手で工程間を移動させる必要がないため単発プレスと比べると生産性は高いです。
また、単発プレスの金型を使うため、大型の製品などの製作に向いています。
プレス加工と板金・鍛造の違い
プレス加工と、板金また鍛造は、金型を使う点で同じです。
しかし、それぞれには違いがあります。
プレス加工と板金の違い
板金は、専用の金型を用意せず既存の汎用金型を使うため、プレス加工と比べて時間とコストがかかりません。
そのため、イニシャルコストを抑え、リードタイムを短縮できるメリットがあります。
試作の製作や、ちょっとした曲げ加工などであれば、スピーディーに対応可能です。
しかし、板金は機械を使っての加工に加え、人の手を使っての加工も伴います。
そのため、技術者に依存します。
また、このことにより大量生産にも向いていません。
プレス加工と鍛造の違い
鍛造は、熱して柔らかくなった被加工材を、金型を使い、叩いて鍛えながら成型する加工方法です。
これにより、強度また耐久性の高い製品を製作することができます。
プレス加工との違いとしてあげられるのは、被加工材の厚さです。
プレス加工は薄い金属の板を被加工材としますが、鍛造は円柱など塊状の金属を被加工材とします。
そのため、プレス加工は常温で行われる一方、鍛造は熱して行われます。